やあ、僕の名前はエレン。
妹が一人いて、名前はレーチェルっていう。
僕らはお母さんと三人で、とどろき山のふもとの村に住んでいる。
お母さんは、胸の病気をしていて、あまり働けない。
だから、僕が働いてお金を稼いでいる(妹はまだ小さくて、まだ働けない。でもまあ、たまには手伝ってくれるけどね)。
なんの仕事をしているかって?
町まで行って、そこで電気を売っているのさ。僕は町では「電気売りのエレン」って呼ばれてる。
とにかく町の人々は、たくさん電気を使うんだ。
でも、町では電気ができないだろう?
電気がどこでできるか、知っているかい?
僕はとどろき山まで行って、そこで「電気の実」をとってくる。
「電気の実」は、まだ太陽が昇る前の朝早くにしか採れない。
僕は毎朝、太陽が昇る前に、とどろき山まで行って、闇夜に光る「電気の実」を見つけ出して収穫する。
「電気の実」を見つけると僕はナイフをヘタの部分に押し当てて、そして素早く切り落とす。
これがなかなか、熟練の技が必要でね。あまりゆっくりやると、電気が実から溢れ出してしまうんだ。
電気を蓄えた「電気の実」を馬車に乗せて、毎朝僕は町へ行って、電気を売る、それが僕の日課。
学校にも行けてないから、字の読み書きができない。
そのかわりに、レーチェルには学校に行ってもらっている。
レーチェルには僕みたいに「電気売り」にはなってほくないからね。
勉強をして、大人になったら、いい仕事に就いてほしい。とは言っても、僕はこの仕事に誇りを持っている。
僕らのお父さんも、とても腕のいい「電気売り」だった。
でもある日、お父さんはとどろき山に電気の実をとりにいった時に、雷にうたれて死んでしまった。
とどろき山は、雷がよく落ちる事で知られている。
電気の実は、山に落ちる雷の電気を蓄えるんだ。だから、雷が落ちない所では電気の実はできない。
でもどうした事か、この年はとどろき山に、あまり雷が落ちなかった。
電気の実の収穫が減ったので、村人達は困っていた。村には僕と同じような「電気売り」が多くいたからね。
なかには、町まで出稼ぎにいってしまう村人もいた。
でも僕は読み書きもできないものだから、「電気の実」を探しに山奥へ山奥へと行くしかなかった。
そんなある日、僕は村で「電気ウナギ」の話を聞いた。
その電気ウナギは、とどろき山に流れる川に住んでいて、雷を食べる事なく、自分で電気を作る事ができるらしい。
そういえば、電気ウナギの話は、お父さんからも聞いた事がある。
電気ウナギはとても獰猛でしかも頭がよく、動物だけではなく、人間も食べてしまうらしい。
何人もの電気売りが、電気ウナギを捕まえようとしたが、電気ウナギの電気にあてられ、命を落としたという。
電気の実を見つけるのが難しくなってきたので、僕は電気ウナギを捕まえる計画をたてはじめた。
僕は「電気の実」のツルで大きな網を作り始めた。これならば、強い電気をあてても、破る事ができないだろう、と考えたんだ。
お母さんには内緒で、僕はある朝、電気ウナギを捕まえにいく事にした。
太陽が昇る前に僕は目を覚まし、ナイフを取り出して、とどろき山でとれた砥石をあてて研いだ。
このナイフは亡くなったお父さんの自慢のナイフだった。
お父さんが亡くなった後、僕はこれを使って電気の実を収穫している。
お父さんが「このナイフで電気も切る事ができる」と言っていたな、そういえば。
ナイフを研いでいると、何か気配がしたので後ろを振り返るとレーチェルが立っていた。
驚いた僕がレーチェルを見ると、レーチェルが言った。
「あたしも行く!」
「レーチェル、しーっ!静かに!お母さんが起きてしまうだろう!ダメだよ。今回の仕事はとても危険なんだから!」
「イヤ!あたしもいく!」
「分かった分かった。・・・でもちゃんと僕の言う事をきかなきゃダメだぞ」
しかたがないので、僕はレーチェルも連れていく事にした。
お母さんにバレたら、すごく怒られるだろうな、きっと・・・・。
僕らはお母さんが起きないように、そーっと静かに家を出て、とどろき山へと向かった。
電気ウナギを捕まえに。
――――続く
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