オオカミになった羊(後編39)by クレーン謙
紅葉が始まりかけた山々に囲まれた、メリナ王国の王都バロメッツ。 その広大な敷地にそびえ立つ難攻不落で名高いバロメッツ城。城のちょうど中央に位置する謁見の間で、アルゴー大公は国王ファウヌス三世...
紅葉が始まりかけた山々に囲まれた、メリナ王国の王都バロメッツ。 その広大な敷地にそびえ立つ難攻不落で名高いバロメッツ城。城のちょうど中央に位置する謁見の間で、アルゴー大公は国王ファウヌス三世...
──いったい、あれからどれぐらい時間が経ったのだろうか? 僕がエレンやフレム達と、この世界を救うためにヴァイーラ伯爵に戦いを挑んだのは? あの頃、僕は10歳。エリはまだ6歳。そうか、もうあ...
事務所に設置されたコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、それを飲みながら私はエリの到着を待っていた──サイバー空間に侵入し、そこで知り得た情報を彼女に伝える為だ。 窓の外を見ると、夕暮れも近く、空を飛...
ここは、羊村東面の壁沿いに立つショーンの邸宅。 その石造りの古い邸宅は、元々大地主だった先祖から受け継ぎ、そこを改装してショーンは政を執行っているのです。 最上階に作られた執務室で、羊村第23代村...
エリがドローンに乗り帰ったあと、私は『コモリ・サイバー探偵事務所』と書かれたドアを開き中へ入り、椅子に腰掛け、頭の中の整理に努めた。 私は机の引き出しを開き、今では御法度になっているタバコを取り出し...
夢に現れた《天使》の語った言葉に戸惑いながら、アルゴー元帥が聞きました。 「私の目は……貴方のものなんですか?」 《天使》は、頭から伸びている黒くて長い毛を揺らせながらアルゴーの目を見つめ...
メリナ王国軍、南方地方司令官ケプリは羊村の名産品である懐中時計を取り出し、時刻を確認しつつ斥候兵からの報告を待ち侘びていました。 オオカミ軍に何か新しい動きが窺えたので、ケプリは未占領だったヴィーグ...
アヌビス族のセト大佐。そしてキメラ族のアルゴー元帥。二匹はアセナを見ると地面にひざまずき、尾を垂れました。 尾を垂らしひざまずくのは、オオカミ族にとっては最大限の相手への敬意の現しなのです。 セト...
「コバヤシを雇っていた ? 君たちの『敵』が ? 」 なんだか急に、全く想定外の話になってきたな、と私は身構えながらエリの次の言葉を待っ た。 「そうです。しかしコバヤシ探偵はその依頼者...
その早朝、セルフォンがけたたましく鳴り響いたので、私は目を覚まし、いったい何事か、とベッドから跳ね起き、テーブルに置いていたセルフォンを手に取った。 どうやら、また私は例の夢を見ていたようだ...