オオカミになった羊(後編9)by クレーン謙
「ほほう、そうかね......。アリエスはメアリ王国に亡命したのだね......」 とヘルメスは、ソールの報告にさほどの関心を示さずに返事をします。 メリナ王国から輸入した嗅ぎタバコを鼻に近づけ、...
「ほほう、そうかね......。アリエスはメアリ王国に亡命したのだね......」 とヘルメスは、ソールの報告にさほどの関心を示さずに返事をします。 メリナ王国から輸入した嗅ぎタバコを鼻に近づけ、...
羊村、通商大臣のヘルメスはメリナ王国から仕入れた最新式の遠眼鏡を覗き込み、村を取り囲む壁の外を見ています。 羊村は高い壁に囲まれている為、下の方からは壁の外が見えないのですが、今ヘルメスが居...
マーナガルムに連れられ、ミハリとアセナが集落の広場に向かうと、いつもならオオカミ達が火を囲み肉を分かち合っているのですが、そこは普段と違う殺気立った気配が漂っていました。 ーー弓や槍を手...
ーーミハリには、誰にも話していない密かな楽しみが、ひとつあります。 子供の頃、遊びにいっていた羊村で食べた野菜の味が、ミハリには忘れられませんでした。 オオカミ達が立ち入る事のない山奥に、...
夜風が吹き、羊が被っているマントがはためきました。 ーーアリエスは顔が見えぬその羊を見てふと思います。 この羊は、実は黄泉の国からの使者ではないか ? と。 大巫女は、あの世とこの世...
ーー羊村は『村』と呼ぶには、もはや大きすぎました。 昔から農業が盛んで、手先が器用な羊村の住人は時計などの工芸品の輸出で潤い、豊かさの象徴として豪奢な邸宅や館や城が建てられました。 大きな...
誰にだって、なんだか気になる相手というのが居ます。 それが、子供の頃に仲がよかった相手なら、尚更です。 そのような相手とは、会わなくなっても、いつかは再会する運命なのではないでしょうか? ー...
今宵は四年に一度の狼月。 月が一番大きく輝く、オオカミにとって、最も神聖な夜。 狼月の夜には、オオカミ族が一堂に集まり、指導者を投票で選ぶ会合が催されます。 皆が集まったのを確認すると、オオ...
オオカミの子はショーンの事に気づくと、目を光らせながらクンクンと鼻を鳴らしました。 ショーンは、相手を刺激せぬように恐る恐ると後ずさりします。 「お、おまえはオオカミだな ! どこから...
さてさて、ところ変わってここは羊の村の小学校。 メーメーと可愛い声をあげながら、今日も子羊達が学校にやってきました。 子羊達は学校で『いかにして羊らしく正しく生きるか』などを勉強をするのです。...