むかしむかーしの事。ある山奥の村に、音色が綺麗だと評判のアコースティック・ギターがいました。
アコースティック・ギターは、弦をつま弾き、村の子供達やお年寄りたちを、その美しい音色で楽しませていました。
そんなある日の事。アコースティック・ギターはふと、こう思いました。
「ーーもしかすると、都会へ出ると僕は人気者になれるんじゃないかな?」
そのように考えたアコースティック・ギターは、都会に行く事にしました。
残念がる村の子供達に見送られながら、アコースティック・ギターは山奥の村を後にし、都会へと向かいました。
都会に着いてみますと、そこには実に多くの楽器たちがいました。
ドンドンドンと激しいリズムを刻むドラム、ボンボンボンと地の底から響くような音を奏でるベースギター、聴いた事もないような不思議な音色を出すキーボード。
彼ら/彼女たちは都会っ子の人気者でした。
アコースティック・ギターはそれらの楽器に負けじと、弦をつま弾きましたが、町の人々は誰も足を止めません。
他の楽器の音があまりにも大きいので、アコースティック・ギターの音が聴こえないのです。
何日も何日もアコースティック・ギターは街角で演奏を続けましたが、誰も耳を傾けようとはしません。
「……もう村に帰ろうかな」そう考えていると、街角の反対側から静かな音色が聞こえてきました。
それはウクレレの音でした。そこへ向かうと、アコースティック・ギターよりもひと回りも小さいウクレレが、街頭でその音色を披露していました。
でも、やはり足を止めウクレレの演奏に聞き入る者はありませんでした。
アコースティック・ギターはウクレレに話しかけました。
「やあ、いい音色をしてるね君は」
ウクレレはつま弾くのを止め、返事をしました。
「あら、あなたはアコースティック・ギターね。あなたの演奏、いつも聴こえているわよ。素敵な音ね」
このようにして二人は出会い、意気投合しました。
二人は一緒に暮らすようになり、一緒に街角で演奏をするようになったのです。
二人で演奏を始めたおかげで、少し人々が足を止め、演奏を聴くようにはなったのですが、二人は貧しいままでした。
弦が錆びてきたので、そろそろ弦を変えようとアコースティック・ギターは楽器屋へと向かいました。
そこの楽器屋で、ある広告が目に入りました。
そこの広告にはこう書かれていました。
「地方からやってきた売れない楽器たちよ! 改造をして人生を変えてみないか? 」
――――つづく
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