アリジゴク〜声の大きな少数意見が通るとき、通らないとき

アリジゴクは昆虫綱アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科の幼虫の総称である。つまり、成虫はウスバカゲロウ、幼虫はアリジゴクである。アリジゴクは日本では17種類知られているが、そのうち巣穴を掘ってアリなどを補食する種は5種で、意外とマイナーである。アリジゴクは地獄というワードが示すとおり、一度巣穴に入ったアリは二度と這い上がれないという強烈なインパクトをもって語られるため、マイナーな種数でもそれが全体を代表するように感じてしまう。日常生活において声の大きな少数意見が通ってしまう現象と同じである。

声の大きな少数意見を発する者は往々にして権力者であったり、ややこしい人物だったりする。最初は純粋に自分の意見を発していただけかもしれないが、自分の意見が通らないと報復したり、すねたりするので回りが気を使ってそれほど重要ではない場面で譲歩するのである。それが常態化すると忖度が生まれ、声の大きな少数意見が常に通ってしまう。アリジゴクもその様な権力者、あるいはややこしい人物なのかもしれない。

巣を作るアリジゴクは巣を作らず人目につかないアリジゴクに対して、アリジゴクというものは巣を作ってアリを罠にはめて捕獲するものだという行動規範を押し付け、対外的にも発信してしまったものだから、回りはそういうものだと認識してしまっている。間違った情報が独り歩きした瞬間である。

さて、我々はアリジゴクの巣穴に落ちたアリに自分を例え、脱け出せない苦しい状況の比喩に使うことがある。俳句においても夏の季語になっており、日本文化にとっても重要な生物と言えるだろう。そんな中、アリジゴクと日本文化について興味がわいたのでChat-GPT (3.5)に聞いてみた。

Q.アリジゴクと日本文化について教えてください

A.アリジゴク(蟻地獄)は、日本の伝説や民話に登場する、地下に広がる蟻の巣穴に関連した話やイメージです。以下にアリジゴクと日本文化について詳しく説明します:

1.伝説と民話: アリジゴクは、古典文学や民間伝承においてしばしば登場します。これらの物語では、アリジゴクはしばしば巨大で神秘的な場所として描かれ、主人公がアリジゴクに挑む冒険や試練の舞台として使われます。

2.道徳的な教訓: アリジゴクの物語は、勤勉さ、協力、忍耐、そして困難に立ち向かう力を讃えるために使われることがあります。アリジゴクの中で蟻たちは協力して巣を築き、食物を集めることが描かれ、これは日本の文化における共同体や協力の価値観を象徴しています。

3.美術と文化: アリジゴクは、日本の美術や文化にも影響を与えています。伝統的な絵画や工芸品において、アリジゴクのモチーフやイメージはしばしば見られ、そのデザインや模様は日本の伝統的な美学に反映されています。

4.現代文化: アリジゴクのイメージは現代の日本でも根強く残っており、アート、アニメ、漫画、映画などのメディアにおいてもしばしば登場します。また、アリジゴクを題材にしたテーマパークや観光スポットも存在します。

アリジゴクは、日本の文化において重要な象徴として位置づけられ、勤勉さや協力、忍耐などの美徳を讃える一部として広く受け入れられています。

Chat-GPTについては以前も取り上げたが、とにかく適当なことしか言わないのである。今回Chat-GPTが列挙した伝説と民話、道徳的な教訓、美術と文化、現代文化についてそれぞれ私は素人なのでそんなこともあったのかもしれないと思ったのだが、どれ一つとして具体例が思い出せない。

アリジゴクが巨大で神秘的な場所として描かれた物語を知らないし、アリジゴクの中でアリたちが協力している描写を聞いたことがないし、伝統的な絵画にアリジゴクが描かれている例を知らないし、アリジゴクを題材にしたテーマパークには行ってみたいとも思わない。全てでたらめと言い切れない程度にしか知識を持ち合わせていないが、どう考えてもおかしい。

つまり、ここは妄想タイムである。例えば、アリジゴクの巣の中でアリたちが協力して巣を築き食物を集める物語を作ってみてもいいかもしれない。数匹のアリがアリジゴクの巣に落ちてしまったが、協力してアリジゴクから逃れるうちにアリの巣を形成して、一生出られないかもしれない中で生活していく物語。一歩足を踏みはずすとアリジゴクに食べられてしまうかもしれない恐怖の中、生きる意味を考えるというモチーフで創作してもいいかもしれない。

一時期のChat-GPTブームは去ったように思えるが、それでも新聞紙上では各方面で実用化が進んでいると書かれている。創作の現場ではChat-GPTはまだまだ活躍の場は与えられないかもしれないが、創作のヒントには活用できそうである。今回Chat-GPTが生成した文章はでたらめだったが、これを信じて情報発信してしまっては誤情報が世に広まる危険性もはらんでいる。今のところの救いはChat-GPTが権力者やややこしい人物ではないということである。

(by ぐっちー)

※このエッセイ「妄想生き物紀行」第85回はポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」第85回「アリジゴク」と関連した内容です。「妄想旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組(ポッドキャスト)です。そちらもお聴きになると一層お楽しみいただけますのでぜひどうぞ! ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第85回「アリジゴク〜声の大きな少数意見が通るとき、通らないとき」いかがでしたでしょうか。今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当・ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

いや〜笑いました。
Chat-GPTの妄想力がすごいです。人類たるもの、計算力や情報処理能力はともかく、妄想でAIに負けをとっては名折れ、もっと妄想力を鍛えねば! と思いを新たにいたしました。
与太はさておき、アリジゴクのテーマパーク、私も聞いたことがありませんが、あるならちょっと行ってみたいと思ってしまいました。

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