AIM30は腎臓病用療法食ではない。獣医さんに相談が必要。

AIM30発売は大事な最初の一歩

3月1日、マルカンから「AIM30(エーアイエム・サーティー)」が発売された。多くの愛猫家が待ちに待っていたニュースである。
食べさせたかったムギはもう遠くへ行ってしまったが、やっぱり嬉しい。宮﨑徹教授が長年続けてこられたAIM研究の最初の実用的成果だからだ。

宮﨑徹教授とAIMについて、ぼくが初めて知ったのは4年半前、ムギが慢性腎臓病の診断を受けた2017年8月だった。ネットで見つけたアエラの記事に、AIM製剤が実用化すれば猫の寿命がいまの倍の30歳になるという予想とともに、「2020年の東京五輪開催までの実用化を目指す」と書いてあった。
多くの方がご存じの通り、AIM製剤の2020年実用化は実現しなかった。2022年現在、宮崎教授は、あと2年程度でと発言されている。

AIM30はAIM製剤とは違う。AIM製剤は体外でAIMを作って体内に注射するものだが、AIM30はもともと猫の体内にあるAIMを活性化するものだ。
宮﨑教授は、医薬品であるAIM製剤は開発に長い時間がかかるので、なんとか一日も早くAIM研究の成果を猫たちのために生かそうとAIM活性化成分の研究を進めたそうだ。

発売が公式発表されたときひとつ意外なことがあった。総合栄養食だったことだ。宮﨑教授は以前「おやつ、サプリメント」という言葉を使われていたから、おやつなら療法食と併用できるのではと思っていた。総合栄養食ならごはんである。主食用と考えていい。すると療法食との関係はどうなるのか?

マルカンの公式サイトに「この商品は療法食ではありません」「現在、療法食を与えられている方はご使用前にかかりつけの獣医師へご相談ください」と書かれている。
それはそうだ。慢性腎臓病を悪化させないために療法食を食べているわけだから、素人判断で療法食をやめてはいけない。
AIM30公式サイト

ただ獣医さんといえども発売されたばかりの商品について確信を持って言えることがどれほどあるだろう? 成分表示である程度はわかるだろうが、いちばんの特色であるAIM活性化成分「A-30」についてはほぼ何もわからないのではないか。公式サイトにある「A-30」の説明は「愛猫の健康維持にアプローチするアミノ酸です」だけなのだ。

なんとなく「うちのコにAIM30を食べさせていいですか?」と必死の面持ちのオーナーさんに相談されて困っている獣医さんの顔が浮かんでしまうのは気のせいだろうか。
どんな実験をしてどんな効果が確かめられたのか、公式サイトにもう少し詳しい説明があったらいいのにと思うが、ひょっとしたら人間の健康食品にもよくあるように「効能をうたってはいけない」ルールがあるのかもしれない。

猫が30歳まで生きる日

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AIM活性化成分がドリアンから見つかったという話は、宮﨑教授の過去のインタビューにもご著書『猫が30歳まで生きる日』にも登場した。しかしAIM30の原材料にドリアンはない。
先月発売された「NyAERA(ニャエラ)2022」にAIMの特集記事があり、宮﨑教授が「ドリアンそのものとは違う食品添加物なので、それ自体は無味無臭です」と語っている。

NyAERA (ニャエラ) 2022 (AERA増刊)

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また、『猫が30歳まで生きる日』でも「NyAERA(ニャエラ)2022」でも、AIM活性化成分を含むペットフードをまず総合栄養食(一般食)として開発するのは、待ちわびている愛猫家の皆さんに一日も早く届けるためと説明されている。療法食だと臨床試験や承認に時間がかかるらしい。
しかし「より詳細な臨床試験を重ねたうえで、軽度腎臓病の猫用の療法食も作りたい」とも書かれているので、いずれ療法食が必要な猫さんもA30を摂取できるようになるのだろう。
今回のAIM30発売はあくまで第一歩なのだ。これからAIM活性化療法食もでき、AIM製剤もできるのだ。必ず。

発売はとても明るい話題だが、残念なこともあった。AIM30発売と同時に悪質な転売が発生したのだ。
店頭で売り切れが多発した一方で、メルカリ等には店頭価格の倍から10倍もの値段での出品が続出した。命や健康を金儲けの道具にするのは悲しいとしか言いようがない。
こういう悪質な転売ヤー対策は「転売ヤーからは絶対買わない」しかない。
コンサートチケットのような数に限りのあるものとは違う。マルカンの増産体制や流通が整えばすぐにどこでも入手できるようになるのは間違いない。
落ち着きましょう(ムギがいたらぼくも落ち着いてないかもしれないけど)。

21歳の猫ムギのブログ

ムギのこぶしが咲いた。ムギが長い間毎日ひなたぼっこしていた2階の窓辺からの景色。今年も咲いたよ。

★スーパー猫の日2022年2月22日のインタビューで宮﨑徹教授はAIM活性化物質について語っています。
「キャットフードを開発したマルカンと行った実験では、活性化物質入りのフードを1週間続けて食べたネコで、血中のAIMが数%程度活性化したというデータが取れています。」
AIM活性化物質入りフードが商品化 ネコの腎臓病予防に期待 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー

(by 風木一人)


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