ながいながいへび、パリへいく

このお話は絵本『ながいながいへびのはなし』(文・風木一人 絵・高畠純 小峰書店)の続編です。

絵本「ながいながいへびのはなし」

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ながいながいへび、パリへいく

1、
ながーいへびの あたまとしっぽ
こうして あうのも ひさしぶり
せっかく いっしょに なれたんだから
パリまで いこうと たびにでた。

2、
あたまが うみをわたるとき、しっぽもいっしょに ざんぶりわたる。

3、
あたまが やまをのぼるとき、しっぽもいっしょに もりもりのぼる。

4、
とらが しっぽをねらっても あたまが ひとにらみでおいはらうし、
あたまの かゆいところは しっぽが こちょこちょ かいてやる。

5、
「ねえ」といえば いつだって 「なあに?」とこたえる あいてがいる。
ひとりじゃないって すてきだね。

6、
あたまは けっこう そそっかしい。ときどき みちをまちがえる。
「ごめんよ しっぽ。パリは こっちじゃなさそうだ」
「いいよ あたま。だれだって まちがえることはある」

7、
あたまはいつも はりきりすぎ。おおきなさばくも いっちょくせん。「それいけ~」
しっぽはほんとは のんびりずき。ふうふう あわてて ついていく。「まってよ~」

8、
あたまが ごはんをたべるとき、しっぽは たいくつで おひるね。
だから よるには ねつきがわるい。
やっとねむったら あさがきて、
あたまは げんきでも しっぽは ねぶそくで ふーらふら。

9、
おかしなムードに なってきた。
「あぶなくっても ちかみちをいこうよ」と あたまがいえば、
「ぼくは とおまわりでも あんしんなみちがいい」と しっぽ。
「きょうじゅうに もうひとやま こえようか?」と あたまがいえば、
「もう つかれてるんだ。やすみたい」と しっぽ。
なんだか きもちが あわないみたい。

10、
あるとき あたまは ひとりごと。「さいきん まえほど たのしくないなぁ」
しっぽも ぽつりと ひとりごと。「あたまについていくのも たいへんだなぁ」
「しっぽがいなけりゃ、もっと びゅんびゅん とばせるのに」
「あたまがいなけりゃ、のんびり きらくに いけるのに」

11、
しっぽは とうとう こういった。
「ねえ あたま。よかったら さきにいってくれないか。ぼくはあとからのんびりいくよ」
あたまは びっくりして こうこたえた。
「さみしいこというなよ、しっぽ。パリはきっと もうすぐだよ。いっしょに エッフェルとうに のぼろうよ。ここでわかれたら いつまたあえるか わからないんだ」

12、
あたまとしっぽは たびをつづけた。たのしいことばかりじゃなかったけれど。
いろんなまちをとおりすぎ、あるとき ついに、

13、
「エッフェルとうだ!」「パリについたんだ!」
あたまが かけだした。しっぽも かけだした。と おもったら、

14、
ぐぐん! と うしろにひっぱられた。「なんだい、いまのは?」
どうもなんだか ようすがへんだ。
あたまがすすむと しっぽがさがる。
しっぽがすすむと あたまがさがる。
いったいぜんたい どうしたんだろう?

15、
しっぽが はっとして ふりかえった。
「ねえ、あたま。ひょっとして きみ、とうきょうタワーのみぎがわをとおったかい?」
「こんなときになんだよ、しっぽ? そうだな、たしかにぼくは みぎがわをとおった」
「やっぱりそうか。ぼくはひだりがわをとおったんだ。あたまがみぎで しっぽがひだり……」
「ということは?」

16、
こういうことか!(東京タワーに胴がひっかかっている絵)

17、
ああ、まいったまいった。
しかたないから あたまとしっぽ、
エッフェルとうで あみだをひいて、
とおいとおい とうきょうまで
どっちがひきかえすか きめたって。
やーれやれ。

(おしまい)

(by 風木一人)


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