『つづきのねこ』 失ったものにはきっと「つづき」がある。深い悲しみの果てと、救済の神秘。

絵本「つづきのねこ」吉田稔美さく 講談社

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『つづきのねこ』(吉田稔美 画・文 講談社)

小さな子ども向けの絵本ではありません。小学生でも高学年なら読めるでしょうけれど、まあ、いわゆる大人の絵本。

カバーの袖に、こうあります。
「ちいさなものたちが返ってくるのは あの時ああしなければ、などと どうしても繰りごとをいう私たちを見かね、ゆるしてくれようとするのじゃないか」

大切な猫を病気で亡くした「わたし」の前に、そっくりの猫が現われます。見た目だけでなく、食べ物の好みも似ているし、前の猫に教えたことも覚えているかのよう。同じ名前で呼ばれ、何事もなく暮らし始めたその猫を「わたし」は、つづきのねこ、と言うのです。

生まれ変わりの奇跡を描いた本と受け取ることも可能ですが、私はむしろ、傷ついた心が時間を経て回復していくひとつの過程を描いたものと受け取りました。
傷ついた身体が(私たちの意志と関係なく)生来の治癒能力を発揮するように、傷ついた心も癒されようと働きます。時に静かに時に激しく、利用できるものはすべて利用して。その現場では心の内部のことも外部のことも判然とは区別されないのです。

猫好きな人には特に響くであろう内容ですが、それ以外の人にも決して無縁な本ではありません。
それなりの年月を生きていく限り、猫を失わない人はいても、大切なものを失わない人はいないのですから。

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