なにわぶし論語論第67回「我は暇あらず」

子貢人を方ぶ。子曰く、賜や賢なるかな。夫れ我は則ち暇あらず、と。
(憲問 二十九)

――――子貢がいろいろな人を比べて批評していた。
それを見た先生が言った。「賜(子貢のこと)は頭が良いのう。ま、わしにはそんなことをしている暇はないわ」――――

これで終わりである。短い。
だが、子貢の気持ちになって、続きを2行だけ足してみよう。

子貢、声を低くして同輩に言いて曰く、夫子も之をす、と。(子貢は小さい声で同輩に言った。「先生だってやってるじゃんか。」)

そう。論語を読むと、孔子が人を批評する言葉が度々登場するのである。弟子たちが真似をしても仕方ないではないか。
これではまるで、いつも新聞を読みながら食事をしている父ちゃんが、子供に向かって「食事中に漫画を読むな」と言うようなものである。

こんなほのぼのしたエピソードが、お堅い倫理や政治の話に混じって入っているのも、論語の味である。

もちろん、この章から、「他人を批評ばかりしていないで、自分のやるべきことをやらねばならない」という教訓を読み取ることもできる。でも、孔子だってやってるのである。

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