
【 魔の帰巣人形 】(5)
ようやく老人が出てきた。窒息気分のTTはため息をついた。 老人が手にしていたのは葉書程度の小さな紙だった。低く聞き取りづらい声でボソボソと...
ようやく老人が出てきた。窒息気分のTTはため息をついた。 老人が手にしていたのは葉書程度の小さな紙だった。低く聞き取りづらい声でボソボソと...
「薄暗い部屋だったので……窓から入ってくる日光が雲でゆらゆらと揺れたりとか、空中を漂ったチリとかホコリがキラキラと光ったりとか……そういうの...
友人TTは数年に一度、2週間から4週間ほどの海外放浪撮影旅行に行く。そうした行動を彼は「BPC」と呼んでいる。「バックパックカメラマン」とい...
帰巣とはなにか。「動物の帰巣性」という言葉がある。この場合の「動物」とは、虫や鳥や魚も含まれる。つまりミツバチや、ツバメや、サケなどにとって...
カメラマンの友人がいる。私よりもふたつ年上で、いまインドで生きておれば(生きていると信じたい)65歳。体重54kg、身長171cmの痩せた男...
「あいつの女が殺ったらしい」 「……女?」 1週間前は「あいつが殺った」だった。しかも「現場のヤツらはみな知ってる」だった。1週間たって...
「あいつが殺ったんだ」 現場監督が口にしたのはキツネ男の名前だった。私はぶあついガラスのジョッキを口に運ぼうとしていたのだが、それが途中で...
現場に向かいつつあれこれ考えた。今日と明日でこのハードなバイトは終了だ。この最後の2日間のあいだに彼女を見かける確率はいったいどれほどなのだ...
「見たか?」 「……見ました」 「話したか?」 「……話してません」 我々は事務所にいた。長テーブルの端で調理パンと缶コーヒーを...
夜の空き地で犬が殺された。たまたまその現場近くに2人の男がいた。足場4階で涼んでいた私と、事務所脇の暗がりに潜んでいたキツネ男だ。2人とも気...