正月映画のお勧め2本。トルコ映画「猫が教えてくれたこと」とインド映画「バーフバリ 王の凱旋」

謹賀新年。今年も好きな映画について自由に書いていきたい。
今年第一回はお正月に見た映画の中のお勧め。見るものに幸福感を与えてくれる映画と吃驚仰天させられた映画の2本だ。

トルコ映画 イスタンブール 猫が教えてくれたこと 監督:ジェイダ・トルン

「猫が教えてくれたこと」 監督:ジェイダ・トルン

まず、トルコ映画のドキュメンタリー「猫が教えてくれたこと」について。自分は猫好きでは全然ないが、映画の評判がいいのと東西の要衝であるイスタンブールへの憧れがあるので見に行った。
正月3日、新宿の映画館に上映開始一時間前に行ったのに、何と一番前の一席しか残ってなく数十年ぶりに下から見上げる形で鑑賞した。
見終わるとイスタンブールへの憧れはますます募り、かつ猫も魅力があるなあと思った次第。見ながらしばし幸福感に浸れた程。

7匹の猫が登場する。猫も様々な個性があり姐御みたいな猫から優美な猫までいる。地元の様々な人たちがその猫たちを世話する。猫と人間が関わりあう結構面白いエピソードが幾つもある。
船を嵐で失くした後、猫が鳴いていて、そこへ行くと財布が落ちておりそれに大金が入っていて立ち直った話。薬では治らなかったメンタルな病が猫の世話をすることで治った話など。
皆さん、猫をよく可愛がっている。猫を愛しながら、逆に喜びというか生きがいをもらっているようだ。猫を「神の使い」とまで言った人もいた。
この街に猫が多い理由が、ここが交通の要地で、世界各国からネズミ退治のため貨物船に猫が乗って来て、陸に降りているうちに船が出てしまい、猫が残るようになった、という歴史も面白い。

新しい建物を増やしていく現代化がいいのかという疑問もさりげなく提出されている。私も、グローバル化で世界中が同じ街並みになるのもイヤだなと思う。例えば、ソウルの西のシンチョンというところに昔は古くて野暮ったくて好きだった一角があったが、段々平屋の家は取り壊されて変わっていった。建ったのは味気ない、どこにでもあるシネコンの映画館だった。その街自身の個性は残っていってほしい。
重く濃密な劇映画を見るのもいいが、たまにはこんなテレビの「世界街歩き」みたいに肩がこらずに見られて、かつ、テレビより人々の息遣いや人生が感じられる映画のドキュメントって貴重なように思う。

映画「バーフバリ王の凱旋」

監督:S・S・ラージャマウリ 出演:プラバース アヌシュカ・シェッティ ラーナー・ダッグバーティ他

次にインド映画の「バーフバリ 王の凱旋」だ。こりゃ、新年早々、スゴイ映画を見てしまったと思った。滅多に使わぬ「ひれ伏す」という言葉を使いたい位だ。インド映画と言えば(もちろん全部見たわけではないが)「ムトゥ 踊るマハラジャ」「きっと、うまくいく」がその代表作だが、これもその一本になるのじゃないか。なってほしい。

昨年前編が公開されていて(実は見ていないが)、この映画の冒頭5分程で前編のストーリーが要約されるので前編を見てなくても全く結構。
3世代に渡るスケールの大きな話が豪快に展開していく。内容は王位継承をめぐる神話的な話だ。インドの古典「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」を下敷きにしている由。映画の作りはハリウッド映画とインド映画の幸福な合体、つまり、CGもあるスペクタクルな映画でありながら目くるめく踊りや歌もある長尺インド映画であり、アジアの人間臭さも濃厚だ。主役バーフバリがプロレスラーみたいな体格と動きでカッコいい。彼のアクションが凄すぎて感心しつつ笑ってしまうところもある。また、戦争で戦う時の戦術も荒唐無稽だがアナクロかつ人間的で、これまた驚き笑ってしまう。そこがいい。
子供の頃、「ベンハー」や「十戒」などのスペクタクル映画を見て映画って凄いなあと思った懐かしい記憶があるが、そういう感覚を半世紀ぶりに思い出したような気がする。

古典的ストーリー、荒唐無稽だが目を見張るアクションは共に相当に考え抜かれている。双方が製作者たちの卓越した「創造力」によるものだと思う。
インド映画研究者によれば、女性がここまで活躍する映画はないとの事。確かに後編の主要な役の女性二人(主人公の祖母と母)も美人で気が強く意志堅甲だった。これもインド映画史上最大のヒットとなった理由の一つなのか。

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(by 新村豊三)

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