イ・ジョンジェが登場する韓国ドラマ「イカゲーム」と韓国映画「ただ悪より救いたまえ」

昨年11月、勤務先の学校で、同僚である中年イギリス女性講師に「ニイムラさん、ユー、韓国に関心あるけど、「イカゲーム」見た?面白いわよ」と言われた。「イカゲーム」とはネットフリックス史上最も見られたドラマ。
ビックリした。イギリス人もネトフリで韓国ドラマを見る時代になっているのだ。ネトフリと言えば2020年の「愛の不時着」「梨泰院クラス」以後御無沙汰だったが、この年始に再度ネトフリに加入してこの「イカゲーム」全9話を見た。

「イカゲーム」監督:ファン・ドンヒョク 出演:イ・ジョンジェ パク・ヘス ウィ・ハジュン他

「イカゲーム」監督:ファン・ドンヒョク 出演:イ・ジョンジェ パク・ヘス ウィ・ハジュン他

これまで全く見たこともない異色の内容である。韓国南西の離島に金に困窮した者456名が集められ、5回続けて勝つと大金(46億円相当)がもらえるというゲームを開始する。
主なる登場人物は、会社を首になり離婚して娘は元妻に取られた冴えない中年男ギフン、ソウル大(韓国の東大)出身だが会社の金を使い込み多額の借金を負ったサンウ、脱北して来た若い娘セビョク、不法滞在をして働くが賃金をもらえぬパキスタン人アリ、少し認知も入っている老人イルナム。

このゲームというのが、「綱引き」「ビー玉」など子供の遊びなのだ。(日本でも子供の頃やったことのあるものばかりだ)。しかし、このゲームに負けると(「脱落」と呼ばれる)射殺されてしまうという恐怖のデスゲームだ。
簡単なゲームだが、展開が工夫されており、目が離せない。例えば、綱引きでは男だけのチームと、女子や老人の入る弱者チームが戦うことになり、弱者チームの不利が予想されるが、意外や、老人の知恵によって(!)挽回するのだ。

参加者は人生の崖っぷちに立つものばかりで、当然、現代韓国社会の格差、脱北者や老人問題などを反映している。
その現実問題のリアルさと、郷愁を誘うゲーム内容と、ゲームを行う空間のシンプルで抽象的な雰囲気がコントラストをなして、独得の味を出している。参加者を監視し射殺していくスタッフはピンクの服を着て黒い仮面をかぶり、その顔には、〇△□のマークが付いている(尚、〇△□と並べると「イカ」の形になる)。

感想を言うと、時に面白く時に残酷でグロテスクである。ラストの第9話でこのゲームを誰が企画したか種明かしがされるが、意表を付いている。微かなヒューマニズムもある。
登場人物はみなキャラが立ち演技も熱演だが、参加番号456番の中年男ギフンを人気俳優イ・ジョンジェが演じている。髪はボサボサ、金もなく、ゲーム中も時にズルをやるが、根は悪い男ではない。切ない表情を見せて印象に残る。

「ただ悪より救いたまえ」監督:ホン・ウォンチャン 出演:ファン・ジョンミン イ・ジョンジェ他

監督:ホン・ウォンチャン 出演:ファン・ジョンミン イ・ジョンジェ他

さて、そのイ・ジョンジェが、別人のように変身して、クレイジーな殺し屋を演じるのが現在公開中のアクション映画「ただ悪より救いたまえ」だ。2021年公開の韓国映画にも沢山の傑作・秀作があったが、これは、抜群に面白く恐らくピカ一ではないか。

日本で最後の暗殺の仕事を終えたインナム(ファン・ジョンミン)は、元恋人がバンコクで殺され自分の娘らしき少女も誘拐されたために現地へ乗り込む。性転換手術のため滞在する女装の韓国人ユイ(パク・チョンミン 好演)の助けを借りて行方を探っていく。インナムは沈着で寡黙ではあるが、誘拐関係者の指を切り落とすなど過激な方法を取る。
そして、日本でインナムに兄を殺されて、復讐を果たそうとするイ・ジョンジェ扮するレイがインナムを追撃していく。このレイたるや、髪はオールバック、首に大きなタトゥ―を入れ、銃さばきやナイフさばきがよく、クレイジーに人を殺していく爬虫類的なイメージの不気味で凶暴な男なのだ。イ・ジョンジェは、「イカゲーム」と打って変わったぶっ飛んだ怪演である。

このバンコク市街でのインナムとレイの死闘が凄い。一方、ユイはユーモアを醸し出し優しさも見せる。
この映画はバンコクの実態だろうか、かなりリアルにこの街の猥雑で活気ある様子を生き生きと映す。そして、ここが驚きだが、探す娘は臓器売買の組織に監禁されて手術されようとする。この臓器売買の実態は現実を反映しているのだろう。
先の読めないハラハラする話の面白さに加えて、演出や映像がスタイリッシュ、時に重厚で鮮烈なのだ。正に、アドレナリンが出るような映画的な快感がある。
韓国映画好きの私でさえ、実は、現在の韓国映画の描写のエグさ、しつこさ、血の出る残酷さには辟易しているが(「アシュラ」「哭声」等だ)、これは許せる。後味も悪くない結末なのだ。

(by 新村豊三)

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