外国からの労働者、移民、難民を描く映画「ファミリア」「KAMIKAZE TAXI」「マイスモールランド」

自宅の新聞を毎朝バイクで届けてくれるのはベトナムから来ている若い女性だ(実際の姿を見たことはないが)。配達した後は、日本語学校に通う。販売所の方に聞いた話では、配達が20区域ある中で、10区がベトナム人担当。皆、若くはあっても、冬場は相当寒いだろうし、慣れない環境で大変だろうなあと思う。記すかどうか少し迷うが、昨年のクリスマス時には、新聞入れにチョコレートが入った袋を下げておいて、プレゼントした。ささやかな慰労のためと、少しでも日本に対していい印象を持ってもらいたい気持ちからだ。

都会ではコンビニの店員は外国人が多い。将来、介護士も足りないと言っている。いいコミュニケーションができるように、将来フィリピンの言語タガログ語を学ぼうと思っている(笑)。様々な分野で外国人労働者に助けてもらうしかないではないか。

監督:成島出 出演:役所広司 吉沢亮 サガエルカス他

監督:成島出 出演:役所広司 吉沢亮 サガエルカス他

日本に来て定住しているブラジル人と日本人の交流を描く映画が役所広司主演の「ファミリア」だ。
役所は愛知県豊田市で陶芸を行って生計を得ている。彼には一人息子がおり、アルジェリアでプラント工事を請け負っている。あることから、役所は近くの団地で暮らすブラジル人の若者と親しくなる。その若者は地元の「半グレ」と呼ばれるグループに暴行を受けたりしており、役所はあまりの酷さにある行動を起こすことになる。
ブラジルの移民たちは、古びた団地に暮らし、コミュニティを形成している。この団地、三棟からなり、それが三角形のように鋭角の位置に立っている(このブラジル人の生活や意識をドキュメント映画でじっくり見たい気になった)。
正直言うと、この映画、面白いと思う部分と、ちょっと失敗しているのではと思う部分がある。ブラジル系移民と日本人の交流の映画なのだが、それ以外にも、沢山のものを、あまりに劇的に詰め込み過ぎている。
しかし、窯焼き職人である役所広司の演技と言うか、存在感、滲み出る彼の人柄がとてもいい(彼が、東京まで出かけて行って取る、ある行動には胸を打たれた)。

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さて、役所広司と言えば、彼自身が、日系ペルー人を演じた1995年の「KAMIKAZE TAXI」がある。今回DVDで再見してみたが、大変に面白い。
やくざの手下高橋正也が、大物政治家の家から現金2億円を奪い、偶然出会った日系ペルー人で日本に出稼ぎに来ているタクシードライバーの寒竹(役所)の車で逃走を続ける。二人は段々に親しくなってゆき、ペルーでの寒竹の凄絶な過去も明らかになっていく。ゲリラ兵に家族を殺され、自分も闘ったのだ。また、父親は戦前日本軍の特攻隊員であったことも分かる。
最初の政治家の家を襲うシーンはやたらと長いが、後半の物語の展開には惹きつけられる。
少しだけ書くと、寒竹は単身、大物政治家宅に復讐に向かう(この映画の最初の題は「復讐の天使」)。この展開に無理がない。大変によくできた物語だと思う。演出は緩急自在でうますぎる程だ。ペルーの伝統ケーナの叙情的な音楽が随所に聞こえる。音楽のセンスもいい。
実は1995年に見た時は、日本への出稼ぎ労働者のテーマを受け止める知識が足りなかった。今見ると、脚本監督の原田真人の先見の明、社会意識の高さに驚かされる。

好きな映画をもう一本! 昨年見た映画に、日本で暮らすクルド人一家の現状を描いた作品「マイスモールランド」がある。地味な小品ながら秀作であった。

監督:川和田恵真 出演:嵐莉菜 奥平大兼 アラシ・カーフィザデー他

監督:川和田恵真 出演:嵐莉菜 奥平大兼 アラシ・カーフィザデー他

この一家は政治的亡命を求めて来日し、埼玉県川口市で暮らしている。家族は難民と認められないので本国に送還されそうになる。その対応策として、父親が最後に取るある行動には胸を衝かれた。
高校生のヒロイン嵐莉菜も好演。ルッキズムになるが、美しい。この映画の良いところは、社会派映画であるが、一方で、青春映画としてもすぐれている点で、バイト先で知り合った日本人高校生との交流も描かれる。
この映画には、実際の父親・妹・弟が出演している(!)。父親は元イラン人である。嵐莉菜は母親も日本・ドイツのハーフであり、様々なルーツを持っている。映画では近所に住む沢山のクルド人が集まって食事する生活も描かれる。
脚本監督は川和田恵真。彼女も日本人と英国人の親を持つ。早稲田大卒の若手で是枝裕和監督の弟子である。
この家族が川口から川一本向こうの東京まで行ってはいけない法律があるのも、この映画で知った。知らねばならないことがまだまだ沢山ある。

(by 新村豊三)

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