前回に続き、「赤ワシ探偵」のこぼれ話をします。
シリーズ1「フロメラ・フラニカ」の最初の方で、ねずみの占い師が出てきます。彼ら占いねずみには、モノから持ち主の残留思念を読み取ったり、未来を垣間見る能力があります。その能力を生かして、占いを生業としているのです。
占いねずみは、十六番街と呼ばれる一角に店を構えています。四角い柱の一辺に四軒、合計十六軒の店があるのです。お店が小さすぎて近寄れないので、占ってもらいに来た客たちは、離れたところから糸電話で会話します。
この十六番街の発想の元は、台湾の台北市にある「占い横丁」です。台湾には何度か旅行したことがあって、占い横丁にも行ったような気がしていたのですが、どうやら記憶違いで、私が行ったのは別の場所にあるお店だったようです。本当の占い横丁の写真を見ると、天井の低い薄暗い地下通路に、間口一間(いっけん)ぐらいのお店がずらりと並んでいて、まさに「十六番街」のイメージにぴったりです。
ねずみは、古くから人間の生活の場にいたからか、多くの童話に登場し、キャラクター化もされています。賢そうなイメージは、人間の目を盗んで食べ物を持っていくようなすばしこさから作られたものでしょうか。
高い知能を持つねずみというと、真っ先に思い浮かぶのが『アルジャーノンに花束を』です。知性とは、愛情とは……と考えさせられる悲しいお話です。70年代の名作アニメ「ガンバの冒険」も記憶に残る作品です。サイコロを振るイカサマが大好きでした。そういえばイカサマは、サイコロを使って占いもしますね。
現代でも、ねずみは人間の生活圏にいます。地下鉄の線路にもいますし、つい先日、家の近くで、真昼間に猫がねずみを捕まえるのを見ました。
昔、木造アパートに住んでいたとき、部屋にねずみが出たことがありました。視界の端を横切るのですが、なかなかちゃんと目撃することができず、何日もねずみの「気配」と暮らしました。壁の中から這い回る音が聞こえて眠れなくなり、辛抱強く「気配」を追ったところ、ついに配電盤と壁との隙間から出入りしていることを突き止めました。
病気を媒介することもあり、現実世界ではどちらかというと嫌われ者のねずみですが、あのすばしこい動きを見ると、超能力ではないにせよ、一種の「賢さ」は持っているように感じられてなりません。
(by 芳納珪)
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『水神様の舟』
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