「塑界の森」試し読み~『五つの色の物語』(ホテル暴風雨絵画文芸部)より~
好評発売中・イラストレーター5名による空想絵物語アンソロジー『五つの色の物語』に収録された<赤の物語>『塑界の森』(芳納珪 / 服部奈々子)の冒頭部分を試し読みできます。明治期の日本を思わせる架空世界の画学生が主人公の青春ファンタジー小説です。収録されたイラストも一部掲載します。
好評発売中・イラストレーター5名による空想絵物語アンソロジー『五つの色の物語』に収録された<赤の物語>『塑界の森』(芳納珪 / 服部奈々子)の冒頭部分を試し読みできます。明治期の日本を思わせる架空世界の画学生が主人公の青春ファンタジー小説です。収録されたイラストも一部掲載します。
きりんは花壇に行って、バラに尋ねました。 「きみの花びらを貸してくれない? 体に貼り付けて模様にしたいんだ」 「私の花びらは全部私のものよ。貸すなんてとんでもないわ」 きりん...
実家の納戸にあった古い植物図鑑を見ていたら、奇妙な見開き記事があった。並んでいるのは日本語の文字だが、さっぱり意味をなしていないのだ。ページの端に「電気を使わない光で照らしてみてくださ...
先週最終回を迎えた短編「栞の木」は、某出版社のショートショートコンテストに応募し、優秀作(入選の下)になった作品です。入選作は出版社のwebサイトに掲載されますが優秀作は掲載されず、でも選評は...
6 しおり――本名栞ミキの親戚を名乗る女性にうながされるままに、私は荷物を持って外へ出た。「煙に当てられて」重くなった頭と体は、きりっとした夜の空気に当たると、少ししゃきっとした。 私...
5 栞の葉の切れ端をたっぷり放り込んだ木組みに点火すると、七色の炎が上がった。 浴衣を着た女たちがその周りで踊り、男たちは勇壮に和太鼓を叩いた。私はしおりの隣に座って、食べたり飲んだり...
4 どちらを向いても山が迫る、谷底の一本道に沿った細長い集落だった。 どの家も古い感じで、街並みは統一されている。でも、前に行ったことのある妻籠宿みたいに、観光地として整備されているわけではな...
3 翌朝、朝食を終えるとすぐに、また車で駅まで送ってもらった。他の泊り客は二、三組いるようだったけど、車に乗ったのは私一人だった。 温泉街なのだから、一泊で帰るとしても、もう少しのんびりするの...
2 半月ほどが過ぎて、いちだんと秋が深まった。 その日、学食のいつものテーブルに、しおりは現れなかった。初めてのことだ。 急用が入ったか、体調でも崩したか。まあそんなこともあるだろうと思って...
しおり〔しをり〕【枝折(り)/栞】 1 紙・布・革などで作り、書物の間に挟んで目印とするもの。 2 簡単な手引書。案内書。「修学旅行の―」 3 山道などで、木の枝などを折って道しるべ...