「飛行木(ひこうき)」
あらしの翌朝、森の奥に大きな木が倒れていた。
子狼がその上に乗って遊んでいる と、ノスリの長老がやってきた。
「これこれ、この木は森を守っていた神聖な木なのだ。乗ったりしてはいかん。おりなさい」
するととつぜん、木が矢のように飛び出し、空高く舞い上がった。
子狼は、振り落とされないように必死でしがみついた。ノスリの長老は素晴らしいスピードで追いつき、ならんで飛んだ。
幹に耳を寄せると、樹液がいきおいよく流れる音が聞こえた。みるみるうちに枝に花が咲き、 花びらを散らしながら木は飛んだ。
「ノスリさん、わかったよ!」
子狼は叫んだ。
「この木は自由になりたかったんだ。根っこが抜けたので、やっと飛べたって喜んでる!」
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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