5月26日(金)渋谷TSUTAYA O-nestで原始神母を観た。2週続けて原始神母を観られるなんて夢のようである。
会場に入ると、高円寺HIGH「シド・バレット・ナイト」の興奮がまったく冷めていないことに気づく。まるで時間が跳んでしまったようだ。1週間何をしていたんだっけ?(笑)
整理番号10番で左寄り2列目に着席。前のお客さんが大きいので写真撮影は厳しい(演奏・鑑賞の妨げにならなければ撮影は許可されている)。
今日はわき目もふらず鑑賞に徹するか。しかしわたしのレポートに写真がないとセットリスト以外存在価値のない独り言になってしまう…。
なんてことを考えているうちに、まだ暗いステージにメンバーたちが早くも現れた。
心臓の音が響く。帽子を目深にかぶった扇田裕太郎さんが不気味に笑いだす。キーボードが奏でる複雑な効果音の渦が高まった瞬間、冨田麗香さんの絶叫が突き抜ける!
『狂気』だ。数あるピンクフロイドの傑作の中でも跳びきりのセールスを記録したモンスターアルバムを第1部に持ってきた。これは全曲やる。全部通してやるに違いないと思ったらまさにそうなのだった。
Speak to Me
Breathe in the Air
On the Run
『狂気 The Dark Side of the Moon』はA面とB面のあいだ以外音切れのない、全曲がひとつながりの作品だ。
柏原克己さんのパワフルなドラム、ケネス・アンドリューのボーカル、三国義貴さん&大久保治信さんのキーボードバトル、曲間でホッとする間がないから興奮はどんどん高まっていく。
Time
The Great Gig in the Sky
Time はピンクフロイドにしてはポップな曲だ。木暮(シャケ)武彦さんのギターソロに酔ったあとは、冨田麗香さんの Great Gig が待っている。歌詞のないスキャットはどんな感情を込めるか歌い手が決めなければならない。そこが難しく面白いところなのだろう。素人が言うのも失礼だが、先週よりずっとよかった! 何かつかんだという感じがした。
Money
Us and Them
Any Colour You Like
Brain Damage
Eclipse
次から次たたみかける凝縮されたサウンドは圧倒的。先週も聴いた曲たちだが、何度聴いてもよい。30年聴いても飽きないのだ、あと30年くらいは余裕でイケる。
(左側だったからレジェンド三国義貴さんのプレイがよく見えた。三国さんの陰でラブリーレイナさんはほぼ見えず(泣)。冨田麗香さんはなんとか見えた。かわいい♪)
☆ ☆ ☆ ☆
第1部はほぼ1時間。幸せで泣きそうだがまだ先の方が長い。
第2部はこの曲からだった。
Shine on You Crazy Diamond
20分を超える「フロイド3大曲」(勝手に命名)の一つ。シド・バレットにまつわる伝説的エピソードもあり、深い思い入れを持つファンも多いのではないか。
客演サックスの方のお名前がわかった。竹野昌邦さん。サザンオールスターズ、渡辺美里、矢沢永吉など多くのアーティストのツアー、レコーディングに参加されている人らしい。最後のソロの暴れっぷりは先週より数段上で、バンド&ファンになじんでくれたのかなあと嬉しい気持ちに。
Have a Cigar
ライブで映える曲というのがあるがこれもそう。スタジオ版は正直ピンとこないのだが、テンポを上げ、ケネス・アンドリューが茶目っけたっぷりに歌うと実に楽しい。
Wish You Were Here
ここまで3曲はアルバム『Wish You Were Here 邦題:炎〜あなたがここにいてほしい』から。70年代黄金期の代表曲を発表順にという今夜のコンセプトがはっきり見えてきた。
すると次は、
『Animals』だ。原始神母でやるのは初めてらしい。
Pigs on the Wing
Sheep
扇田さんが椅子に座り、しずかに弾き語りだす。小曲 Pigs on the Wing だ。これは導入としてやると思った。しかし犬と羊と豚のどれをやるかは全く読めなかった。ヒツジかあ!
77年発表の『Animals』はロックらしいハードな音にロジャー・ウォーターズらしい現代社会へのキツい風刺を乗せた作品。まあ単純に聴いてもめちゃめちゃカッコいいわけだが、あとにざわっと残るものまで味わいたい。
(左:ケネス・アンドリュー&扇田裕太郎 右:木暮武彦)
Another Brick in the Wall Part II
79年発表、おそらく『狂気』のつぎに有名なアルバムから、ピンクフロイド唯一の全米ナンバーワンシングル。まあ黄金期は典型的アルバムアーティストでシングルを発売していなかったわけだが。
これで73年の『狂気』から4枚、フロイド絶頂期の足跡をたどったことになる。
Echoes
One of These Days
今回とても覚えやすいセットリストだった。同じアルバムからの曲はまとめてやる。アルバムも年代順だったが、ここだけは遡った。
71年の『Meddle』(邦題の「おせっかい」は誤訳だと思う。「干渉」くらいか)から「フロイド3大曲」の一つにしてわたしのオールタイムベスト「Echoes」。
1988年のデヴィッド・ギルモア率いるピンクフロイド公演でも、2002年のロジャーウォーターズのソロ公演でも聴けなかったから、原始神母で聴けるのは本当に嬉しい。言葉で表せないくらい嬉しい。
フロイドにしては短いが強烈な印象を残す曲、One of These Days が本編ラストであった。
そしてアンコール。
Atom Heart Mother
「フロイド3大曲」最後はこれ。オリジナルはオーケストラ&合唱団つき。これに近い大編成のライブは本家フロイドも数えるほどしかやっていない。
原始神母はギター、ベース、ドラムス、ダブルキーボード、サックス、男性ボーカル、女性コーラス2人、計9人で演奏した。その音の厚みは驚嘆するばかりで、オリジナルの壮大なイメージをまったく裏切らない。まさにアレをライブで聴いていると実感できる。
一人ひとりの技量がすべて素晴らしいのだ。これほどのミュージシャンたちが結集してくれたことに感謝するとともに、これほどの人たちを結集させたピンクフロイドの力に改めて感動する。
The Nile Song
最後はいつもの。総立ちとなって盛り上がる。先週は最初から最後まで立ってたんだが(笑)
5回目の原始神母だった。明らかにこれまでと選曲が違った。
「サービスもするけど基本オレたちのやりたい曲やるから」というスタンスだと思っていたが、今回はサービス全開、「あれもこれもそっちもあっちも聴きたいよね。オーケー全部やろう」って感じだった。
マニアックにやった高円寺とセットで考えているからか、それともピンクフロイド50周年の祭りだからだろうか。
7月28日(金)はフジロック出演である。原始神母ワンマンに来るのはPINK FLOYDファン、それもマニアックな人がほとんどだろうが、この素晴らしさは決してマニアだけのものではない。マニアだけのものにしてはもったいない。
フジロックでは「どうせカバーバンドでしょ?」とか思っている人にこそ観てほしい。マジぶっとぶから。
そして年末も押し詰まった12月29日(金)は六本木 EX THEATER でピンクフロイド50周年祭の最終章だ。ライブハウスの一体感は最高だが、PINK FLOYDナンバーのスケール感はデカイ会場にもぴったりだ。ついに円形スクリーンか? ミラーボール in ミラーボールか? 豚も飛ぶかもしれない!
ピンクフロイドファンの夢は果てしないのである。
★詳しいライブ情報はこちらへ。ライブ動画も多数あり!
原始神母 Pink Floyd trips 公式ページ