スパゲッティー君の大冒険(「スパゲッティのぼうけん」オリジナルバージョン)

むかし昔ある所に、とてもコシの強いスパゲッティーが居ました。
スパゲッティーは町のイタリア料理屋で働いていて、そこのシェフにとても好かれていたそうです。

「スパゲッティー君、キミのコシの強さはそれはそれは世界一だ。キミのおかげでワシの店はいつも大繁盛だ!!」

そのように、スパゲッティー君はシェフに言われていたのです。
毎日毎日、スパゲッティー君は楽しく働いていました。
ある時はスパゲッティー君は、ミートスパゲッティーになったり、またある時はナポリタンになって、客を楽しませていたのです。

スパゲッティー君は、お店の人気者でした。
ある時、スパゲッティー君はテレビを見ていると急に外の世界を見てみたい、と思うようになりました。
そこでスパゲッティー君は、お店のシェフに言いました。

「シェフ、お願いがあります。ぼくは旅に出て外の世界を見たいのです」

「おおそうか。・・・・キミはウチのとても大事な人材だ。しかし外の世界を見て回るのも、勉強になるだろう。よかろう。行っておいで」

そのようにして、スパゲッティー君は旅に出ました。
スパゲッティー君は山をこえ、川をこえテクテクと歩き続けました。

港町に着きました。

港町には外国の船や、めずらしい人や、動物が、たくさん居ました。
「わあ、いいな。ボクもあの船に乗って遠い所へ行ってみたいな」
しかしスパゲッティー君には、船に乗るお金がありません。

スパゲッティー君は船の船長に言いました。
「僕には船に乗るお金がありません。でも、どんな仕事でもやります。ボクを船に乗せてください」

船長はスパゲッティー君をジロジロと見ながら言いました。
「いくらキミがコシが強いといっても、あの重い荷物は持てないだろう。・・・キミには紙テープをやってもらうがいいかね?」
「紙テープってなんですか?」
「船が出航する時に、見送る人達が紙テープをなげるんだよ。キミはとても細長いしコシも強いから、きっとできるだろう。もしそれが出来たら船に乗せてあげよう!」

そこでスパゲッティー君は、見送りの紙テープをやる事になりました。
スパゲッティー君は、とてもいっしょうけんめいに働きました。
スパゲッティー君は、船に乗せてもらう事ができました。

海はとても広く、スパゲッティー君はとてもワクワクとしました。
船は何日も何日も海を進みました。

陸が見えてきました。
それはとてもめずらしい国でした。
スパゲッティー君はその国におりる事にしました。

港をおりると、人々は見た事もない服を着ていて、見た事もない建物がたっています。

お金がなくなったので、スパゲッティー君は働かなければいけません。
そこでスパゲッティー君は町の人に聞きました。

「どこか僕のような外国人がはたらける所を知りませんか?」

「ふ~む。キミは見た所とてもコシが強そうだね。あそこのソバ屋だったらやとってくれるかもね」
と言ってその人は街角のソバ屋を指さします。

スパゲッティー君はソバ屋の玄関をたたくと、中から少し怖そうな料理人が出てきました。
「僕をやとってください」
「ここはスパゲッティー屋じゃない。ソバ屋なのだが」
「でも僕はこう見えてもとてもコシが強いんですよ!!是非つかってみてください」

そういう訳でスパゲッティー君はソバ屋ではたらく事になりました。
スパゲッティー君は見た事もないような、しょっぱいスープにつけられます。
スープはしょっぱいだけではなく、緑色の信じられないぐらいとても辛い薬味が入っていました。

「うわ~、なんだこのスープは!!体がしみてしょうがない!僕の国では麺類をこんな食べ方をしないぞ」

とても辛い仕事でしたがスパゲッティー君は、がんばりました。
しかしある日の事、客が店主に言いました。

「最近の君の店のソバはあれはいったいなんだね?ソバにしては少し太すぎるし、箸でつかみにくいし、つゆは麺にからみにくい」

店主はスパゲッティー君に言いました。

「残念ながらキミはクビだ!!」
スパゲッティー君は泣く泣くそば屋をあとにしました。

「ああ、どうしたらいいんだろう?見知らぬ国で僕はひとりぼっちだ。おまけに仕事もないし・・・・」
スパゲッティー君は靴屋の側を通りすぎました。
すると靴屋の店主がスパゲッティー君に声をかけました。

「キミ、キミ、どうだねウチの店ではたらかないかね?」
「え?僕をやとってくれるんですか?僕はいったい何の仕事をすればいいのでしょう?」
「ちょうど白い靴ひもが無くて困っていたのだよ。キミは白くて丈夫そうだからね」

スパゲッティー君は靴ひもとして靴屋で働く事になりました。
なれない仕事だったのですが、スパゲッティー君は一生懸命働きました。
しかし何日かすると客が店主に言いました。

「君の店の白い靴ひもは、最初はコシが強くて使いやすいのだが、何日かするとブヨブヨに伸びきってしまって使い物にならんぞ!!」
店主はスパゲッティー君に言いました。
「残念だが・・・」
「ええ、ええ、分かってますよ。クビなんですよね。僕は靴ひもじゃなく麺類なんですから。
やっぱり麺類はヒモにはなれないんですよ」
スパゲッティー君は泣く泣く靴屋をあとにしました。

どこに行っても誰もスパゲッティー君をやとってくれません。
やっと道路工事の人がスパゲッティー君をやとってくれました。
毎日毎日スパゲッティー君はコシをいためながら道路工事をします。

ある日の事、スパゲッティー君が疲れて休んでいると後ろからローラーが迫ってきました。
スパゲッティー君危機一髪!!

スパゲッティー君はローラーにひかれて平らになってしまいました。
道路工事の人はスパゲッティー君に言いました。
「そんなに平らになってしまったら、もう使い物にならないね」

スパゲッティー君はたまったお金で、船に乗り自分の国へ帰りました。

「僕がこんな姿になったらもう、シェフは僕を使ってくれないだろうな・・・」

シェフは変わり果てたスパゲッティー君を見ると驚きましたが、店に置いてくれる事になりました。
そして、予想外にも平らになったスパゲッティー君は、レストランの人気者になりました!
平らになったスパゲッティーは、クリームソースのからみが良いととても評判になったのです。

やがて平らになったスパゲッティーは、フィットチーネと呼ばれるようになり、国中の人気者になり生涯幸せに暮らしたそうです。

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