掃除の神様(前編)by クレーン謙

ユー君のお母さんは、掃除が大好きです。
いえ、掃除が好きというよりは、掃除をせざるを得ないとも言えます。
ーーなにせ、ユー君は部屋を汚してばかり。
なので、毎日間日お母さんはユー君の部屋を掃除します。

ユー君だけではありません。
ユー君のお父さんも、部屋の中を片付けないので、ほっとくと、どんどんと家の中が散らかってしまうのです。
「あ~あ。どうして、二人はいつも部屋を片付けないのかしら ? 困ったものだわ……」
そのようにぼやきながら、お母さんは家の中を掃除します。

ユー君とお父さんだけではありません。
猫のミーちゃんも、家の中を汚すものですから、さあ大変です。
いくら掃除をしても、掃除をしても、家の中がきれいになりません。
「もう、いや ! 神様お願いだから家の中をきれいにして ! 」

ーーお母さんがそのように言うと、ホウキを手にした、白ヒゲのおじいさんが目の前にパッと現れました。
驚いたお母さんが、そのおじいさんに聞きました。

「だ、誰あなたは ? 」
「何をいうのかね ? ワシの事を呼んだのは、そなたではないか。……ワシは掃除の神様じゃよ」
白ヒゲのおじいさんが言いました。
しかし、神様は神様でも、その風貌からして貧乏神にしか見えません。
……警察に電話しようかしら?とお母さんは一瞬思いましたが、思い直しました。

「もし、あなたが本当に『掃除の神様』なら、お願いだから家をきれいにして ! 」
「フムフム、そう言うと思ったので、そなたの為にこれを持ってきたのじゃよ」
そう言い、掃除の神様はお母さんにホウキを手渡しました。

「そのホウキは魔法のホウキじゃ。それを使えばたちどころに家はきれいになる」

ホウキを手にしたお母さんは、訝しがりましたが、試しにそのホウキで汚れた台所の床を掃いてみました。
するとどうでしょう。
たちまちのうちに、汚れていた床がピカピカになったのです !
「まあ!この魔法のホウキは本物だわ ! 」
後ろを振り向くと、掃除の神様はいなくなっていました。
「掃除の神様、ありがとう ! 」

お母さんはウキウキとしながら、ユー君の部屋に行き、魔法のホウキを使って掃除を始めました。
とても不思議な事なのですが、魔法のホウキで床や机の上を掃くと、落ちていたゴミや汚れがたちどころに消えていくのです!
みるみるうちに、ユー君の部屋はきれいになっていきました。
「これは素晴らしいわ ! 」

……次に、お母さんはお父さんの部屋に行き掃除を始めます。
10分もかからないうちに、お父さんの部屋もピカピカになりました。
ユー君とお父さんが学校と会社から帰ってくる頃には、家の中は驚くほどきれいになりました。
ユー君とお父さんはきれいになった家の中を見て唖然とします。

家がきれいになったので、お母さんは上機嫌。
でもどういう訳か、ユー君とお父さんは元気がありません。
それどころか二人は「なんだかお腹が痛い」と言います。
心配になったお母さんは、二人をお医者の所へと連れて行きました。

でも、お医者さんにも原因がよく分からなかったので、仕方がないので二人のレントゲン写真を撮る事にしました。
出来上がったレントゲン写真を見ながら、お医者さんは頭を傾げながらお母さんに言いました。

「……私にもなんだかよく分からないのだが、あなたのご主人と息子さんの腹に何かゴミのような物が写っているのだがね……」

お母さんはそれを聞き、ハッとしました。
「ゴミ?……もしかすると、それは……」

お母さんには思い当たる事があったからです。

――――つづく

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