「男子高校生に絵本を読む」母校へキャリアガイダンスに行った話

高校生、この未知なる存在

先月、母校のM高校に話しにいく機会があった。OBが自分の職業について語る「キャリアガイダンス」というのに呼ばれたのだ。

講演・講座など人前で話す機会はときどきあるが、高校生に話すのは初めてで正直なところ少々ビビっていた。男子高校生が絵本の話を聞いてくれるのか……?
参加42名と聞いても「どれかを選択する必要があり、他がもっとつまらなそうだから消去法で来たのでは?」と疑っていた。
しかし直前に、完全に自由参加で、帰ってもいいのに来てくれた42名であることがわかり、がぜん、やる気が出た(^-^)

自作絵本を4冊読み、制作時にどんなことを考えているかを話し、デビュー作が出版に至った経緯なども話した。
自主的に参加しているだけあってちゃんと興味を持って聞いてくれる。絵本のウケるべきところではウケるし、質問もしてくれる。

ハイライトは赤ちゃん絵本『たまごがあるよ』だっただろうか。これは参加型の絵本で、ぼくは読むとき必ず聴衆に参加してもらう。「たまごがあるよ。とんとんって たたいてみて」と呼びかけて、絵本のたまごを叩いてもらうのだ。
しかし今日は男子高校生である。大丈夫なのか?

赤ちゃん絵本「たまごがあるよ」風木一人 たかしまてつを 角川書店

Amazonで見る

大丈夫だった。とんとん叩いてくれた。
正直言っておじさんは心ひそかに感動した。ははは。

前に高校生と話したのがいつだったかまったく思い出せず、いまの高校生がどんな感覚で生きているのか想像もつかなかったが、話し終わったときには「案外わかりあえるかも」と感じられたのだった。

40年経てばいろいろ変わる

具体的な進路指導のようなものでなくていいと聞いていたので、絵本作りの現場についてあくまで個人的な経験を話した。
彼らの中に将来絵本作家を目指す人がいるかというとほとんどいないだろうけれど、どんな仕事でもプロはこのくらい真剣にやっているのだということが伝われば高校段階のキャリアガイダンスとしてはじゅうぶんではないかと思う。

終了後も残ってさらに質問してくれた生徒6名に「紙書籍と電子書籍のどちらをよく読むか」聞いてみたら全員が「圧倒的に紙」と答えたのが意外だった。
控室で先生方とも少し話した。ぼくがいたころ最も若手だった先生が最年長になっていた(笑)
教育現場でAIとどうつきあっていくかが喫緊の検討課題とのこと。世間とは時間の流れが違うような学校にも、社会の大波は押し寄せてくるのだ。

40年経てば当り前だが、高校生の気質は変わったように感じた。話を聞いてくれるのだ。ぼくらのころはもっと生意気だった。大人に対する警戒感があった。
40年前の大人は「いいから親(先生)の言うことを聞け」という人が多かったと思う。すると子どもにとって大人は自分の自由を奪う存在となり、当然警戒する。
キャリアガイダンスに参加してくれた高校生たちには、ぼくから何か良いものや面白いものを得られるかもしれないという期待感が感じられた。肯定的なのだ。
最近の親はぼくらのころと違ってちゃんと子どもと対話するのかもしれない。少なくともその努力を。
大人が真剣に話を聞いてくれるならやみくもに反抗する必要はないだろう。
思春期はいつの時代も大変。みんなそこを抜けて自分の生き方を見つけていく。うまく抜けられない人が出ないように祈るばかりだ。

(by 風木一人)


『プロの絵本作り~本気で絵本作家を目指す人に~』が紙書籍になりました。連載に加筆修正の上、印税、原稿料、著作権、出版契約に関する章を追加。amazonで独占販売中です。

プロの絵本作り 本気で絵本作家を目指す人に 風木一人著

Amazonで見る

ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・マンガ・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内> <公式 Twitter

 

トップへ戻る