猫絵本の名作で幸せな気持ちになる

猫絵本のロングセラー

前回はペットロスのさなかにある人(ぼくだ)におすすめの猫絵本を紹介したが、今回はペットロスとは関係なく、とにかくかわいい猫絵本、楽しい猫絵本を紹介しよう。優れた猫絵本を読むのは幸せで満たされた気持ちになるための最高の方法のひとつだ。

絵本の世界も猫ブームで、最近の猫絵本にもすばらしいものがあるのだが、今日はロングセラー、名作から選んでみた。

いたずらこねこ

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『いたずらこねこ』バーナディン・クック・文 レミイ・シャーリップ・絵 まさきるりこ・訳 福音館書店

子どものころ好きだった絵本。母に何度も何度も読んでもらった。いったいいつからあるのだろうと思ったら、日本版が1964年初版だった。57年前である。
絵もお話もとてもシンプルで、子猫とカメしか出てこない。そこがいい。

生まれて初めてカメと出会った子猫が、じっと見つめた後、前足で「ポン!」とたたく。いかにも子猫らしいやんちゃさだが、その結果子猫は「めのたまがとびだしそうな」ほどびっくりすることになる。カメの首が消えてしまったのだ!(ひっこめたんですな)
子猫は気をおちつけて用心深くカメを観察したあと、名案(もう一度たたいたら首が出てくるかもしれない)を思いついて、もう一度前足で「ポン!」とやるけれど――さあどうなったでしょう?

好奇心いっぱいで、思いつくと行動にうつさずにはいられない子猫の様子がとにかくかわいい。相手役(?)のカメのマイペースぶりも面白い。
刊行から何十年たっても子どもたちに大人気なのもよくわかる傑作だ。

絵本「こねこのぴっち」ハンス・フィッシャー

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『こねこのぴっち』ハンス・フィッシャー作 石井桃子訳 岩波書店

これも子どものころ持っていた。やはり何度も読んでもらったものだ。『いたずらこねこ』とは対照的に、細部までしっかり描きこまれたにぎやかさが魅力の絵本。5匹の子猫きょうだい、猫のお父さんお母さん、飼い主のりぜっとおばあさんに犬のべろ、めんどりとおんどり、あひる、うさぎ、やぎ、ハンス・フィッシャーのみごとな絵が隅々まで楽しめる。

主人公ぴっちは5匹のきょうだいのなかでいちばん小さくていちばんおとなしい。と書かれているけれど、おとなしいというのは体力まかせの遊び方をしないというだけで、好奇心は人一倍、ひとりでうちを抜け出して冒険するのだ。
失敗して怖い目にもあう。夜、うさぎ小屋に閉じ込められて、キツネとフクロウがくるシーンの怖かったこと。母が怖がらそうとして読むからよりいっそう怖いのだ(笑)。
子猫の「ちっちゃさ」がこれほどかわいく描かれた絵本はそうそうないだろう。もうたまらない。だれもが「ちっちゃ~~い」と声をあげるに違いない。

じつはこの絵本には2種類ある。1954年に出た小さな判型で縦書きのものと、1987年に出た大きな判型で横書きのものだ。
原書はもちろん横書きだが、昔は日本語は縦書きという固定観念があって、横書きの海外絵本も縦書きに変更してしまうことがよくあった。古い版はそれ。原書に近い形で出そうとのちに作り直されたのが新しい版。
個人的には子どものころ読んだ小さな版にも愛着があるが、見くらべたら明らかに新しい版がいい。原作者の表現したかったものがよく伝わってくる。だから、どちらも現役で販売されているが新しい方をおすすめしたい。

絵本「あおい目のこねこ」エゴン・マチーセン

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『あおい目のこねこ』エゴン・マチーセン作 せたていじ訳 福音館書店

猫の絵本、と思って選んできたが「子猫」ばかりになってきてしまった。子猫がかわいいせいだ。高齢猫もかわいいし、そういう絵本もあるが、今日はこの勢いで行ってしまおう。
これも大ロングセラー。日本版は1965年に刊行されている。原書は1949年のようだ。第二次世界大戦が終わってから4年、そういう時代に書かれた。

いかなる意味でも古びていない。ユーモアがあり、かわいさがあり、多様性のテーマがあり、ポジティブシンキングの楽しさがある。

青い目をした元気な子猫(シャム猫?)が「ねずみの国」を見つけに行く話だ。何のためかを訊くのは野暮であろう。子猫が探しているのはもちろん夢と魔法の王国ではない。最初のディズニーランドがカリフォルニアにできたのは1955年。
子猫のキャラクターがいい。いやな目にあったり、イジワルを言われたりしても全然へこたれない。いつも明るい気持ちで楽しいことを考えている。すると本当にいいことがめぐってくるのだ。

100ページ以上あるけれど、絵と文がうまく組み合わせて使われているので、童話ではなく絵本と考えていい。
絵にも文章にも即興で作ったような勢いがある。
絵本を作る立場から見ると、興味深い、分析してみたくなるような点が数多くある。これが70年前に作られたんだなあ。

「ねえだっこして」竹下文子 田中清代

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『ねえだっこして』竹下文子・文 田中清代・絵 金の星社

最後はこれ。2004年初版。今日ご紹介する絵本ではいちばん新しい。でもこれからもずっと愛されてロングセラーとなるだろう。
絵本によくあるテーマに「下の子が生まれたときのお兄ちゃんお姉ちゃんの気持ち」がある。ママとパパの愛を独占していたのに、とつぜん赤ちゃんに主役の座を奪われ、ふたこと目には「お兄ちゃんでしょ」「あとでね」「もう大きいんだから」と言われるのはそれはそれはハードな体験なのだ。

猫にも似たようなことはある。ぼくは1頭飼いしか経験がなく、うちに猫が何匹もいるなんてすごく楽しそうだなあと思うが、実際には複数飼いには難しいところがあって、とくに1匹いる家に新しい猫を迎えるのは簡単ではないそうだ。よほど相性がよくないかぎり、元からいる猫にも新しい猫にもストレスが大きいらしい。
『ねえだっこして』はハイブリッドというか、若夫婦と猫という家庭に(人間の)赤ちゃんが生まれてくる話である。これも現実によくあるケースだろう。

猫はおかあさんのおひざにのってなでてもらうのが大好きなのに、赤ちゃんにおひざを取られてしまう。なにせ生まれたばかりの赤ちゃんは手がかかるから、猫が聞かされるのはいつも「あとでね」「ちょっとまってね」という言葉ばかり。なんともせつないが、ご安心あれ、最後はちゃんとハッピーエンドがやってくる。

この絵本のすばらしいところは主人公の猫がうちのムギにそっくりであることだ!
ほらこのとおり!(^o^)丿

21歳の猫ムギ

今日ご紹介した絵本はすべて大人がひとりで読んでも楽しめる。猫好きならだれでも幸せな気分になれるはず。機会があったらぜひ手に取ってみてほしい。

じつはぼくもいま猫の絵本を制作している。来年刊行される予定だ。いい絵本になるよう頑張らなきゃ。

(by 風木一人)


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