みなさまこんにちは。
先日、ホテル暴風雨の出版レーベル「ホテルの本棚」より、電子書籍『プロの絵本作り』(風木一人著 1〜2巻 各税込250円)が刊行されました。
内容について詳しくはこちらの記事をご覧ください。絵本とは何か、 絵本のアイディアについて、どうやって絵本作家を目指したらいいのか、などなど、風木オーナーの絵本作家生活20年の経験を詰め込んだ実践的な絵本作り読本となっております。表紙はわたくし雨オーナーこと斎藤雨梟が描きました。1巻の表紙には一羽の盆栽フクロウ、2巻には二羽の盆栽フクロウです。
さて、読んでみたいけれど、電子書籍ってナニモノだかわからない、読んだことがない、知ってるけどなんかキライだ、という方も多いのではと思います。
そこで本大好き紙書籍大好き(だけど電子書籍も嫌いじゃないよ!)な私が、
- 電子書籍とは何か
- 電子書籍の読み方
- 紙派の人もこんな時は電子はどう? という電子書籍のいいところ、そして悪いところ
- 紙書籍は滅びるのか? 紙書籍を衰退させる敵は果たして電子書籍なのか
- 紙書籍という文化を残すにはどうすべきか
など、本について最近考えていることを何度かに分けてお送りしたいと思います。
どれが電子書籍でどれが電子書籍でない?
「本」と言えば少なくともここ数百年は、文章などを紙に印刷して製本した冊子のことでした。現代の日本では、もっと狭義に「本屋さんで売っている本」、つまり出版社が出版し、出版取次を通して書店に配本されるという独特の流通経路にのったものを指すことも多いようです。つまり「手作り本」「私家本」「同人誌」などの本を含めない流儀です。自分で紙に字を書いて綴じて表紙をつけても、「本を書きました」と言うのがちょっとはばかれれるのはこのためですね。
それはさておき、そうした紙の本に対して、電子データでできた本が電子書籍です。中身は文字だったり絵だったり漫画だったり、平面表現の紙の本の内容とほぼ同じです。
今お読みいただいているこの記事は、”html”という言語で記述されています。文字と絵の情報をhtmlファイルにしてインターネット上で公開し、ダウンロードしてみなさんのブラウザで読んでもらっているので、「電子書籍を無料配布している」と言って言えなくはないと思います。
ですが現在、一般的な「電子書籍」の意味はもう少し狭いです。
まず、htmlよりも紙の本に似たフォーマットで文章や絵を見るのに適したファイル形式がいくつかあります。EPUB、PDF、MOBI などがよくある形式です。こうした形式で作られたデータを「電子書籍」とひとまず呼ぶことはできるでしょう。
電気信号を直接人間が読むことは困難ですので、電子書籍は読むための端末が必要です。電子書籍専用の読書端末、パソコン、タブレット、スマートフォンなどで読むことができます。それぞれ、読むことのできるファイル形式が違いますが、アプリケーションを入れることで大抵の機器ですべての形式の本を読めます(詳しくは後述)。
「これを見ておいてください」とメールに添付されてくる資料、電子機器や家電のオンラインマニュアルなどはPDF形式のものが多いです。メールソフトやブラウザでそのまま読めてしまうので意識に上りにくいですが、これらは「電子書籍はよくわからない」という方も知らずに読んでいるのではないでしょうか。
実際には、ファイル形式だけの問題ではなく、もっと「本」としての体裁を備えたものを「電子書籍」と呼ぶことが多いです。これは、スマートフォンの写真などの形式「jpeg」といえば画像ファイルだけれど、真っ白なだけだったり字が書いてあるjpegファイルをあまり「画像」と呼ばない感覚と似ています。
表紙があって目次があって中身があって奥付があるという、紙書籍にそっくりなフォーマットで作られ、適した形式で記述されデータ化され、さらに「本」として配布されたり販売されたりしているものが「電子書籍」というのが現在最も一般的な定義かと思われます。
つまり、紙の本が長年培ってきた様式を踏襲した、電子データによるひとかたまりのコンテンツが「電子書籍」です。
電子書籍の読み方
上述したような「電子書籍」は、ではどこで手に入り、どこで読めるのかというと、便利なのは「インターネット上で電子書籍を売る本屋さん」で入手することです。
現在のNo.1 amazonの「kindle本」
2019年現在、電子書籍販売の最大手は紙の本やあらゆる日用品を売る「amazon」です。
amazon の電子書籍は「kindle本」と呼ばれていて、この度刊行された『プロの絵本作り』もkindle本です。
「kindle」とは、amazon が販売している電子書籍を読むための専用端末の名前でもあります。容量や性能の違う色々な種類があり、一番売れている中位モデルがこちら「kindle paperwhite」 紙のように目にやさしい「e-ink」の画面で、防水機能つき。
ですが、読書専用端末を持っていないとkindle本は読めないのでは? というのは誤解で、パソコン用(Windows / Mac)、タブレット・スマートフォン用(iOS / Android )の無料アプリが提供されていて、それらをインストールすれば読むことができます。
電子書籍を入手するには、まずはパソコンやスマートフォンなどからamazonにアクセスし、アカウントを作ります(無料)。次に読むためのアプリケーションをインストールします。
kindleアプリケーションについてはamazonのこちらのページに詳しく説明があり、閲覧している環境に応じたアプリをダウンロードできます。
Windows用 Mac用のアプリダウンロードはこちらからでも。
iOS Android 用は、アプリストアにて「kindle」と検索するのが簡単です。上の、星空の下で読書する少年のアイコンが目印です。
インストールできたら、amazonのkindleストア で好きな電子書籍を探しましょう。無料の本もたくさんありますし、有料の本も冒頭の一部を「無料サンプル」としてダウンロードできます。アプリの動作確認のためにも、欲しい本に間違いがないか確かめるためにも、先に無料本や無料サンプルをダウンロードして試してみるのがおすすめです。
決済はクレジットカードが推奨されますが、デビットカードを登録する、amazonギフト券をコンビニ払いで購入するなど、クレジットカードを使わない方法もあります。docomoかauのユーザならば、携帯料金と合わせての決済も可能です。
一度購入した電子書籍はamazonのクラウドに永年保存され(amazonが潰れない限り)、端末から削除したり、端末が壊れてしまっても、自分のアカウントと紐づけた端末から何度でもダウンロードすることができます。
定額(980円 / 月)で対象電子書籍が読み放題というサービス「kindle unlimited」もあります。amazonで販売されるすべてのkindle本が対象ではないですが、読みたい本が何冊か対象になっていれば、試す価値はありそうです。
No.2 楽天kobo 電子書籍
amazon の kindle本に次ぎ、日本の電子書籍シェア第2位が楽天kobo 電子書籍です。楽天も、「楽天kobo」という読書専用端末を販売しています。
こちらのモデルKobo Aura H2O Edition 2 は、新型kindle paperwhite同様防水タイプで、白(白い紙の本を蛍光灯の下で読んでいるような色)〜オレンジ色(少し古い紙の本を電球の下で読んでいるような色)の色調調整も可能!
Kobo Aura H2O Edition 2(ブラック)
ですが楽天の電子書籍もkindle本同様、専用アプリケーションをインストールすれば、パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも読むことができます。また、クラウドに永年保存され何度でもダウンロードできる仕組みもkindleと同じ。
『プロの絵本作り』はkindle本のみですが、楽天の電子書籍も多数のタイトルが揃っています。amazonの有料kindle本が99円以上であるのに対し、楽天の電子書籍は一冊10円〜50円くらいの価格の安いものがあるのがひとつの特徴です。「楽天市場」などでたまる楽天ポイントも使えるので、期間限定ポイントを使うのに利用する人も多いようです。もちろん電子書籍購入でも楽天ポイントがたまるので、楽天が好きでよく買い物する方とは相性が良いのではないでしょうか。
絵本もあります!
専用の読書端末&電子書籍ストアがあるのは以上二店です。
端末を選ばず読むことのできる電子書籍の書店としては、他にも、丸善・ジュンク堂のhonto (Windows、 Mac、 iOS、 Android 用のアプリの他、パソコンのブラウザで読めるビューワーがある)など多数あります。
「誰でも本を作れる」と自主制作本に特化し、データをアップロードすれば電子書籍だけでなくオンデマンドで紙の本も作れて売れるサービスを提供する「BCCKS」など、紙書籍も扱う従来の出版社や書店・通販サイト以外が運営する、個性的なお店が多く探していると楽しいです。
iOS限定になりますが、appleユーザーにはおなじみのapple books でも電子書籍を買うことができます。
電子書籍はプラットフォーム依存?
ここまで読んで「電子書籍って、amazonで買ったやつと楽天で買ったやつは違うものなの?」「amazonで買ったやつは楽天のアプリで読めないの?」「なんで『プロの絵本作り』はamazonでしか売ってないの?」などの疑問を持たれた方もいらっしゃることでしょう。
そうなのです、電子書籍は、amazonで買ったkindle本はkindleアプリで読むこと、楽天で買った電子書籍は楽天koboアプリで読むことが前提とされています。そもそもファイル形式が違ったり、購入した電子書籍にはDRM(デジタル著作権管理)技術により特定の端末でしか再生できないよう鍵がかかっていたりするのです。
自分の作ったPDFファイルなどを電子書籍アプリで読むことや、DRM技術でロックされていない本をファイル変換して色々なアプリで読むことは可能ですが、いずれも「買った電子書籍を専用アプリで読む」のにに比べると、「ひと手間(かそれ以上)かかる」行程です。
ISBNがついて流通している紙書籍ならば全国どこの書店でも注文して買うことができるのに比べると、この辺りは不自由。いきなり出てしまった電子書籍の少し不便な点です。
私はkindle端末を所持している他、タブレットやパソコンに色々なアプリを入れて電子書籍を購入し、読んだことがあります。「本を読む」というシンプルな機能だけならそう違わないと思いきや、動作の軽快さ、ページ送りのボタン位置やしおりのはさみ方、本棚の閲覧性など、アプリの仕様・使い勝手は様々です。画面酔いするたちなので、紙のようで見やすいkindle端末で読むのが一番気に入っていますが、(kindleは画面がモノクロで小さめなので)カラーの本はタブレットで、画像ソフトやプログラミングの学習書は作業しつつ別ウィンドウでパソコン用アプリを立ち上げ参照、と使い分けています。
これは好みの分かれるところですが、専用アプリケーションの使い勝手も私は今のところamazonのkindleアプリが使いやすいと感じているため、購入した電子書籍の数はkindle本が圧倒的に多いです。
ですが「ここでしか手に入らない、読めない」という本がどこにもあったり、特定の店だけで大セールをやっていたり、単に違うサービスを試してみたい好奇心があったりするので、amazon大好きamazonひとすじ……というわけではありません。今後の電子書籍の進化にも非常に興味があるので、これからもいろいろなプラットフォームで購入すると思います。
現時点で、読書体験の瞬間に注目すれば、電子書籍より紙書籍の方が明らかに優れていると感じます。ですが、読んでみると電子書籍にもメリットがたくさんあるのも明らか。もちろん予想されたもの以外の、使ってみてわかるデメリットも。次回はそれらについて書きます。
ページトップの絵は「電子書籍の出現」。おわかりの通りギュスターヴ・モローの「出現」のパロディです。紙書籍愛好者にはヨハネの首のような禍々しさを感じさせもする電子書籍、今後どうなる?
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