カドカワの公式サイト「カドブン」にインタビューが載りました。たかしまてつをさんと「とりがいるよ3部作」について語っています。ぜひご覧ください。
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こちらではインタビューで出なかった話や、より細かいところの話を。
スタートは2014年4月だった。西池袋のブックギャラリーポポタムで斎藤雨梟&風木一人2人展をやった。二人の共著『ふしぎなトラのトランク』(鈴木出版)を中心に新旧の作品を集めた展覧会だった。
ぼくは会場の隅に『とりがいるよ』のダミー(試作品)を置いていた。それをたかしまてつをさんが気に入ってくれて一緒に作ることになった。ただこの時点では二人とも『とりがいるよ』1作のことしか考えていなかった。
3部作にしたのはカドカワのSさんだ。Sさんはたかしまさんと長いつきあいの編集者で、雑誌、マンガ、文芸と幅広い経験を持つベテランである。
『とりがいるよ』の完成前から、Sさんは「あと2冊作りたいですね」とおっしゃっていたし、いよいよ発売になりとんとんと重版が続くにいたり、いつのまにかシリーズ化は決定事項のようになっていった。
「とり」のことしか考えていなかったぼくにとって「あと2冊」は決して簡単なことではなかった(苦闘の様子はこちら)。なんとか完走できたのは明らかにたかしまさんとSさんのおかげである。
4年2ヶ月かかって3冊の絵本ができたわけだが、ぼくにとって印象深かったのはSさんの仕事振りだ。編集者が1冊の絵本企画を1つのプロジェクトにしていく過程を見せてもらったような気がする。
よく言われるように、編集は本を作って終りの仕事ではなく、作った本を広めていくことも大事な仕事である。
Sさんは1冊目2冊目と作りながら、社内外に味方を増やしていった。様々な形で「とり」や「たまご」と関わってくれた人たちとのつきあいをその場限りにせず、大事につなげていった。だからいま『いっしょにするよ』の完成を喜び応援してくれる人がたくさんいるのだ。
著者や担当編集者が本を愛しているのは当り前。それ以外の人にも愛される本にするためにどんなことができるか、どんな姿勢が必要か、学ばせてもらった。
1作目が『とりがいるよ』。
これは西村敏雄さんがブックファーストの「名著百選」に選んでくれた。ほかにも作家や編集者といったプロによく誉めてもらえる本である。
プロは知っているのだ。新味のある赤ちゃん絵本を作るのがどれほど難しいか。
赤ちゃん絵本にはセオリーがある。赤ちゃんはこんな絵が好き、こんな音が好き、こんな展開が好き。それはある程度経験で確かめられたことだが、セオリーだけで作るとどれも同じような絵本になってしまう。それでは新作の意味がない。
「とり」は思い切ってセオリーを外した。
・キャラが正面を向いていない。
・キャラが小さい。
・擬音語が少ない(ラストシーンのみ)
・「いないいないばあ」のような2画面1組の展開でない。
それでも赤ちゃんが喜んでくれることは制作中いろいろな形で確かめた。セオリーを外したところにも赤ちゃんの好きなものがある。それを発見できたのがこの絵本を作って嬉しかったことだ。
2作目が『たまごがあるよ』。
『とりがいるよ』制作中に、たまごの魅力を知った。試作品に登場させた「たまご」が保育園の子どもたちに大ウケだったのだ。しかし全体のバランスを考えて完成形ではたまごを使わなかった。それを第2作の中心に持ってきた。
魅力があるのに使えなかったものを次の作品で生かすのはぼくの得意パターンである。
第1作で封印した正面顔もたっぷり使った。擬音語も。『とりがいるよ』がああだったから今度はこうしよう、というシリーズものならではの発想が各所に現われている。
個人的に嬉しかったのは「参加型」を使えたこと。2010年に『まるまるまるのほん』(エルヴェ・テュレ作)と出会って以来、いつか使ってやろうと思っていたのが7年たって実現した。参加型がしっくりくるアイデアが出るまでにそれだけの年月がかかったのだ。
3作目が『いっしょにするよ』。
『とり』と『たまご』はコンセプト上の理由で、鳥たちのポーズがほぼ固定だった。
第3作では「いろんなポーズの魅力」を見せたかった。
『とり』と『たまご』ではぼくがたたき台のラフを描いているが、これは言葉だけでお渡しした。その方がより、たかしまさんのセンスが自由に現われるからだ。
『とり』と『たまご』では個にスポットを当てたが、今度は集団にした。それによって関係性が生まれ、ストーリーの楽しみが加わってきた。
1作目に入れられなかったものを2作目に入れ、2作目に入れられなかったものを3作目に入れ、統一感がありながらそれぞれ別の魅力を持つ3冊ができあがった。
絵本作家として培ってきたものをせんぶ注ぎこんだ気がしている。
さてこれからどうしよう(笑)
ちなみに3部作は英語で鳥ロジー。いやいやトリロジー。
(by 風木一人)
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