『もりのおふろ』古いとか新しいとかを超えた普遍的なぬくもり。

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『もりのおふろ』(西村敏雄・さく 福音館書店)

森の奥でお風呂が沸いています。岩ゴツゴツの温泉ではなくタライのようにまあるいお風呂。不思議と思うまもなくやってきたのはライオンで、清潔好きらしいライオンは足もおなかも顔もきれいに洗いますが、背中だけはどうも上手に洗えません。
そこへちょうどゾウがやってきたので「わたしのせなかをあらってもらえませんか」と礼儀正しく頼むとゾウは気持ちよくライオンの背中を洗ってくれます。
同じようにゾウの背中をワニが、ワニの背中をコブタが、コブタの背中をオオカミがと、気持ちよい好意のリレーが、気持ちよいぽかぽかお風呂のまわりで繰り広げられるのです。

西村敏雄さんの絵本にはいつも落ち着いた風格を感じます。新作であってもなんだか昔からある絵本のようなたたずまいです。
一つの理由は同じ舞台にいろいろなキャラが順番に登場するという王道的な展開にあるのでしょうが、作品ごとに工夫されたマチエール(絵の質感)の効果も大きいと思います。何層にも塗り重ねた深みある絵肌が、作品世界に独特の空気感を与えています。それは古いとか新しいとかを超えた普遍的なぬくもり、読む者の身体になじむ感覚です。

『バルバルさん』(文・乾栄里子 福音館書店)、『どうぶつサーカスはじまるよ』など、動物が登場する絵本を多く手がけていらっしゃいますが、動物を好んで描く人に、動物そのものを描きたいタイプと動物の姿を借りて人間を描きたいタイプがいるとすれば、西村さんは明らかに後者でしょう。
西村さんが描く動物は、ライオンもウマもウサギも、どこか人間くさい感じがします。表情から内面が仄見えるようで、こんな人いるな、知り合いの誰それさんにそっくりだ、と楽しい想像がふくらみます。

やや目のつけどころがマニアックかもしれませんが、この絵本で私がことのほか気に入っているのがお湯の表現。ざぶーん、と背中を流すお湯、どぼーん、と湯船に飛び込んだとき飛び散るお湯、その表現がなんとも素晴らしく、見るたび、いいなぁと、うなってしまいます。
どうぞ、動物だけでなくお湯にもご注目あれ。

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