Amazonで紙書籍を出版・販売するとき知っておきたいこと

KDPペーパーバックを作ってみて

昨年秋に始まったばかりのサービスで、情報も少なく大変だったが、とにかく1冊出版し発売したことでいろいろなことが学べた。今日はその中からこれまでの3回で書けなかったことを書いておきたい。過去3回は下からどうぞ。

amazonのKDPでペーパーバック(紙書籍)を出版する
KDPペーパーバックの作り方。本文デザインと表紙作成
KDPのペーパーバックとキンドル電子書籍。費用と利益を考える


【POD:プリントオンデマンド】

アマゾンのセルフ出版で紙書籍を作ろうとする人にとってまず気になるのは「どんな本ができるか」だろう。印刷・製本の品質だ。中身がよくても外見が貧相では売り物にならない。

ぼくも実物を手にするまで不安があったが、ペーパーバック『プロの絵本作り 本気で絵本作家を目指す人に』の出来はじゅうぶん満足できるものだった。これなら1100円出して購入してくれる方に対して恥ずかしくない。

 

KDPペーパーバックはPOD(プリント・オン・デマンド)という、注文があるたびに1冊ずつ刷る方式をとっている。
POD自体はずいぶん昔からあった。在庫を抱えないのが最大の利点で、そのかわりオフセットの大量印刷と比べると費用がかかる割に品質が低いのが欠点だった。
アマゾンのPODは費用面も品質面も大幅に改善された。じつはそのことは間接的に知っていた。アマゾンのPODは個人のセルフ出版に対応したのは昨年10月20日からだが、出版社向けのサービスとしては何年も前から存在し、個人もネクパブ・オーサーズプレスなど仲介する会社を通せば利用できたのだ。

ホテル暴風雨絵画文芸部が出版した『五つの色の物語』がまさにネクパブを利用したアマゾンのPODだった。これの品質がKDPペーパーバックの参考になるだろうと想像していて、まあその通りだったと言っていい。(ネクパブを利用したPODの詳しい説明はこちら

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『プロの絵本作り』が届いたとき唯一不満を持ったのは本がやや波打っていることだったが、数日で落ち着いた。
ソフトカバーの表紙にPP加工をかけると反ってしまうことがあるが(おもに表紙用紙が薄い場合)、それはなかった。
総合点で、本としての品質に問題はない。

【校正刷り】

商業出版では著者校正がある。本がデザインまで完成したら実際に刷ってみて、イメージ通りにできているか確認する仕事だ。ここで見逃すとミスが世に出てしまうからとても緊張する。
KDPペーパーバックでも校正刷りを出せる。ウェブ上でも表紙を含めた全ページのプレビューができるが、やはり印刷して本になった形で確認しなければわからないことがあるから、絶対に校正刷りは出した方がいい。

ここで複数のパターンを試すこともできる。本文用紙の白とクリーム、表紙加工の光沢ありと光沢なし、両方出してくらべることには意味があるだろう。ただし1冊ごとに印刷代+送料のコストはかかる。
校正刷りは用紙も印刷方式も完成品と同じであるはずだ。そうでなければ確認の意味がない。違うのは一点だけ、表紙に「再販禁止」というグレーの帯が印刷されていることだ。あくまで商品ではなく校正刷りだから販売用に回すなということだろう。

【著者用コピー】

じつは<著者用コピー>というのもある。著者が自分で購入して献本したりアマゾン以外で販売したりするためのサービスだ。通常の販売価格ではなく、印刷代+配送料で購入できる。これならちょっとした数を仕入れて自分のネットショップやイベント等で販売し利益を上げることも可能だ。ただし残念ながらアメリカはじめ多くの国では利用できるのに、日本では現時点では利用できない。著者も一般読者と同じ価格でしか購入できない。

ペーパーバック出版もそうだったが、アメリカのAmazonで実装されているサービスが、しばらく待つと日本でも実装されるケースはよくある。著者用コピーもそのうち日本でも利用できるようになるかもしれない。
ちなみに英語の「コピー」は書籍そのものも意味するので、「著者用コピー」とは販売しているのとまったく同じ本のことだ。本をコピーした紙の束とかではない。

【ハードカバー】

日本のKDPでは紙書籍はペーパーバックしか出版できないが、アメリカなどではハードカバー本も出版できる。これもいずれ日本でも使えるようになってほしいサービスだ。
どんな本でもペーパーバックで出せないことはない。しかしやはりハードカバーの方が立派で頑丈である。
ぼくの専門である子どもの絵本は乱暴なあつかいにも耐えなければいけないので、ハードカバーで作るのが望ましい。大人向けの絵本ならペーパーバックでもいけるかもしれない。

【ISBN】

ISBNは国際標準図書番号だ。1冊の本にその本固有の番号が振られる。一般に書店流通させるためにはISBNが必要になる。Amazonでしか売らないKDP(Kindle Direct Publishing)の電子書籍はISBNを必要としない。アマゾン独自のASINで管理されているからだ。しかし同じKDPでもペーパーバックではISBNが必須とされている。理由はわからない。

ISBNは個人でも取得できるが一般には手間と費用がかかる。しかしKDPで紙書籍(ペーパーバック)を作る際は希望すれば(ワンクリックで)アマゾンが無料で割り振ってくれる。ただしこのISBNはアマゾンでしか使えないものだそうだ。つまりISBNがあるからといって他の書店からの注文に応えられるわけではない。

一方でアマゾンに頼らず自分でお金を払ってISBNを取得しそれを使うこともできる。こちらはアマゾン以外でも使える理屈であろうと思うがぼくには詳細はわからない。
現在のところ『プロの絵本作り 本気で絵本作家を目指す人に』をリアル書店に流通させる計画はないので無料のISBNを使用した。<KDPヘルプ「ISBNについて」

【海外販売】

KDPで出版したキンドル電子書籍は海外のAmazonでも販売される。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、オランダ、インド、カナダ、ブラジル、メキシコ、オーストラリアの12か国だ。実際外国で売れることもたまにある。
KDPのペーパーバックも海外のAmazonで販売される。ただし数は減って、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、カナダ、オーストラリアの8か国だ。データをダウンロードするだけの電子書籍と、モノを作って配送する紙書籍との違いだろう。

【落丁、乱丁本のお問い合わせ】

『プロの絵本作り』は本文110ページで制作した。しかし注文して届いた本には111ページと112ページがあった。
111ページは白紙で、112ページには「Printed in Japan 落丁、乱丁本のお問い合わせはAmazon.co.jpカスタマーサービスへ」の文言とバーコードがあった。
たぶんアマゾン側の仕様でどんな本にも標準で入るものなのだろう。この2ページは背幅や印刷コストを計算するときの「ページ数」にはカウントされない。
なお、表紙と裏表紙はカラー印刷できるが、表2と表3(表紙と裏表紙の反対面)は何も印刷できない。

Amazonの Kindle Direct Publishing で紙の本を作ってみて感じたこと、考えたことをこれで一通り書いた。
むやみと難しくはないし、ちゃんとした本ができる。費用は掛からない。気になっている方はぜひチャレンジしてみてほしい。

電子書籍のセルフ出版について書いた記事はこちら
<KDP電子書籍の印税(ロイヤリティ)はなぜ70%なのか?>

(by 風木一人)


『プロの絵本作り~本気で絵本作家を目指す人に~』が紙書籍になりました。当連載に加筆修正の上、印税、原稿料、著作権、出版契約に関する章を追加。amazonで独占販売中です。

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