『ぞうのボタン』絵で語れることは絵で語る。絵本の原点ここにあり。

ぞうのボタン

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『ぞうのボタン』(うえの のりこ・さく 冨山房)

『ねずみくんのチョッキ』で有名な上野紀子さんのデビュー作。それも日本より先にアメリカで出版されたそうです。40年以上も前のことですから、たいへんな快挙といえるでしょう。

まずゾウが登場します。しかしこのゾウ、ふつうじゃありません。おなかに四つのボタンがついているのです。まるで服を着ているみたいに。ふしぎに思いながらページをめくると、なんと! ボタンが外れて、ゾウの中からウマが出てくる!

しかもこのウマ、よく見ると、またおなかにボタンがついているんですね。となると、あとはおわかりでしょう。そう、出てくるんです。違う動物が。

中から出てくるから、だんだん小さな動物になるのは自然です。次は何が出てくるのか、わくわくしながら見ていくと、最後には、またびっくりさせてくれます。びっくりして、また最初から見たくなるはずです。

この絵本には文字がありません。文字なし絵本は子どもにどう読んでいいかわからないという人がいますが、絵だけでわかるように作ってあるのが文字なし絵本ですから、だまって見せるだけでもいいのです。もちろん、「ぞうさんだ」「ボタンがついてるね」「ああ、びっくりした!」等、素直な感想を口にしながら、めくってもいいでしょう。

実にシンプルで大胆な絵本です。本当にいい素材を見出したら、あとはそれを磨きぬくだけ、何かを加える必要などないということを教えてくれます。新人のこのような作品を採用した編集者は、真に尊敬に値します。

1940年代から1970年代にアメリカのハーパー社で活躍したアーシュラ・ノードストロムという人だそうです。

『伝説の編集者ノードストロムの手紙』

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(by 風木一人)


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