『えらぶえほん』絵本はコンセプトでできている。人生は選択でできている。

『えらぶえほん』絵ニック・シャラット 文ピッパ・グッドハート 訳/聞かせ屋。けいたろう 講談社

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『えらぶえほん』 講談社
絵/ニック・シャラット 文/ピッパ・グッドハート 訳/聞かせ屋。けいたろう

絵本は絵と文でできていると思われがちですが、本当はコンセプトでできているのです。絵も文もコンセプトに奉仕するものに過ぎないのです。
コンセプトとは「その絵本が何者であるか」「その絵本で何を表現するか」ということです。

たまに文字のない絵本がありますね。私はああいう文字なし絵本を作りたいと考えたことがあります。
コンセプトを立て(つまり、その絵本で何を表現するかを考え)、それを言葉や図で絵描きさんに伝え、最終的には絵だけですべてを表現した絵本に仕上げる。
実現しませんでしたが、そういうケースではクレジットはどうなるのでしょう?
文がないのだから「文だれそれ 絵だれそれ」ではないですね。「作だれそれ 絵だれそれ」というのも混乱を招きそう。「案だれそれ 絵だれそれ」が無難でしょうか。

さて『えらぶえほん』です。この絵本の文はとても少なくて単純です。たとえば最初の見開きにはこれだけ。
「きみがいってみたいのはどこ? うみ? やま? じゃんぐる? ゆびをさしておしえてね」
一方、絵は細かく細かく描きこんであります。同じ見開きに海も山もジャングルも街も宇宙も砂漠も空も描かれているのです。
文を書く人は楽で、絵を描く人は大変だなあ!と思われるでしょうか?

そのとおり!(笑)

そのとおりではあるのですが、ポイントはコンセプトです。
この絵本はどんな絵本かというと、まったくタイトル通りで、最初から最後まで徹底的に「だれとともだちになりたい?」「どのいえにすんでみたい?」等と読者に問いかけ、みっしり描かれた絵の選択肢から自由に選ぶことを楽しんでもらう作品なのです。

すると「選ぶって面白いな。よし、子どもたちが思う存分選べる絵本を作ろう!」と思い立った人こそが、この絵本の第一の親と言えるでしょう。
「絵/ニック・シャラット 文/ピッパ・グッドハート」のクレジットからはそれがどちらかはわかりません。

『えらぶえほん』を開くと大人の私もわくわく楽しくなってきます。たくさんの選択肢があって、どれでも自由に選んでいいよ!と言われるのはこんなに楽しいのか、と気づかされます。それは絵と文がコンセプトのためにじつにきちんと奉仕しているからで、画家と作家の技術、そして日本版では翻訳者の技術の賜物ですね。

考えてみたら選ぶとは人生そのものです。私たちは毎日朝から晩まで大きなことや小さなことを絶えず選択しつつ生きています。楽しい選択もあるけれどつらい選択もあります。
二つしか選択肢がなくてどちらも嬉しくないケース。嬉しい選択肢がいくつもあるけれど、一つをとったら残りは捨てなければいけないケース。じつに悩ましいし、難しいし、後悔することだってたくさんあるでしょう。

でも、この絵本では何度でも選べます。
楽しい選択肢がたくさんあって、しかも何度でも選べる!
嬉しいわけですね。

ははは。人生もこうだったらいいなあ。

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