『びっくりたまご』 巨匠レオ・レオニ、ますます冴える晩年の傑作

絵本「びっくりたまご」レオ・レオニ作 谷川俊太郎訳 好学社

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『びっくりたまご~3びきのかえるとへんなにわとりのはなし』(レオ=レオニ・作 谷川俊太郎・訳 好学社)

絵本好きならレオニを知らない人は少ないでしょう。絵本デビュー作にして絵本の常識をひっくり返した『あおくんときいろちゃん』(至光社)や、教科書にも載っている『スイミー』(好学社)が有名ですが、私のおすすめはこれ。刊行年が制作年だとすれば、巨匠レオニ、なんと84歳のときの作品です。

まずは文章を読まず、絵だけ見ていきましょう。それでも話はわかります。
カエルが大きなたまごを見つけて持ち帰ります。たまごからは小さなワニの子が生まれ、カエルたちと仲良くなります。ある日、カエルたちはワニの子をお母さんワニのところへ届けてあげます。めでたしめでたし。

おや? なにかヘンですね。ええ、ヘンですよね?
そう。副題の「へんなにわとり」はどこへ行ってしまったんでしょう? 出てきませんでしたよ、そんなの。一ヶ所だけ、赤と青の小鳥が登場したけれど、あれはにわとりじゃありません。

ここで止めておくのも一興ですが、あっさりネタバラシします。レオニ自身は「まず絵だけ見よ」などとすすめてはいませんからね。
ワニの子が「へんなにわとり」なのです。これは秘密でもなんでもなく、文を読めば一目瞭然です。ワニの子がたまごから出てきた場面でカエルは「ほらね! にわとりよ!」と叫ぶし、カエルたちとワニの子が水の中にいる場面では、地の文も「にわとりは およぎが うまくて、はやかった」と書いてあるのです。
本物のワニもにわとりも見たことがないカエルたちの勘違いに、作者がつきあい、読者もくすくす笑いながらつきあうことになる、それがこの絵本の仕掛けです。

面白すぎます。「書いてあること」と「描いてあること」が違う。それによって魅力が生まれてくる。これこそ絵本ですね。

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レオニ作品で、もう一冊ぜひ紹介しておきたいのが『ここにいたい! あっちへいきたい! にひきの のみの はなし』(好学社)。
最初から最後まで一度も主人公の姿が描かれない絵本なんて誰が想像できるでしょう!

絵本「ここにいたい!あっちへいきたい!にひきののみのはなし」レオ・レオニ 谷川俊太郎 好学社

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(by 風木一人)


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