【 魔の自己愛 】(9)

【 神々の作戦 】

「サルタヒコ」は知らなくても「アメノウズメ」あるいは「アマテラスオオミカミ」といえば「聞いたことがある」という人が多いのではないだろうか。
「ほら、〈天の岩戸〉(アマノイワト)神話。洞窟に隠れたアマテラスオオミカミを引きずりだすために、神々がドンチャン騒ぎをした話」と言えば、「ああ、はいはい」とわかるのはおそらく年配の人だろう。「古事記」や「日本書紀」に興味を持っている人ならば大概は知っている有名な話だ。しかし「全然知らん」という読者もいるだろうと思うので、筆者独断の大ザッパな解説を試みたい。

アマテラスオオミカミ。
日本神話に登場の女神である。この女神は要するに太陽神である。なので彼女が機嫌をそこねてどこかに「お隠れになってしまう」なんてことになると、えらいことになる。世界が暗闇に沈んでしまうのだ。ところが彼女の前に「スサノオ」という神が出てくる。この男がまたどうしようもない乱暴者、ではなく乱暴神で、とうとう「アマテラスオオミカミ」の機嫌をそこねてしまう。彼女は洞窟に隠れてしまい、世界は暗闇に沈んでしまった。
「えらいこっちゃ」と八百万の神々が集合し相談となった。この八百万というのは具体的な数値ではなく「すげーたくさん」程度の意味である。

さて、すげーたくさんの神が集って相談し、出てきた作戦。これが笑える。「アマテラスオオミカミ」が隠れちゃった洞窟の前で「飲めや・歌えや・踊れや」のドンチャン大騒ぎが始まる。その中心で踊りまくっている女神が「アメノウズメ」である。

当然、「アマテラスオオミカミ」は驚く。
「……え?……なんで?……あたしが隠れて世界は暗闇に沈んじゃってるはずなのに、なんでそんなに楽しそうなの?」と、こうなる。そこでドアを少し開けて「なんで?」と聞いてしまうのだ。すると返ってきた(前もって用意された)返事が笑える。
「あんたよりすごい女神が出てきたので、喜んでるのさ」

当然、「アマテラスオオミカミ」はさらに驚く。
「なによそれ!……そんな女がどこにいるのさっ?」とムカつき、「自分よりもすごい女神」を見たい一心でさらにドアを開く。そこに見た光り輝く女神は、じつは大きな鏡に映った自分の姿だったのだ。「あっ」と悟った時はすでに遅し。彼女は手をつかまれて、ぐいっと外にひきずり出されてしまった。

「これが神々の考えた作戦?……ダマシ討ちじゃん!」などとあきれてはいけない。なにしろ太古の神々がやったことである。太古の神というのは大概「なにをやっても罪の意識なし」である。洋の東西を問わずムチャクチャなことを平気でやっちゃってるものなのだ。

【 アメノウズメ 】

さて本題。アメノウズメ。
「古事記」に登場のアメノウズメは以下のように描写されている。

「槽伏(うけふ)せて踏み轟こし、神懸かりして胸乳かきいで、裳緒(もひも)を陰(ほと/女陰)に押し垂れき」

つまり大きなオケをひっくり返して「お立ち台」ならぬ「踊り台」とした。タンタンと足で拍子をとり、胸ははだけるわ、ヒモはヘソ下まで下がってしまうわという「あられもない姿」で踊りまくった。

「ストリップダンスじゃん!」などとあきれてはいけない。ストリッパーはもともと脱ぐのが目的で踊っているのだが、アメノウズメは八百万の神々を大笑いさせるために踊っているのだ。かくして神々は笑いさざめき、洞窟に隠れた「アマテラスオオミカミ」は「なにごとならん」と驚くのである。

その「笑いさざめく八百万の神々」の中に「サルタヒコ」がいたのかどうかは知らないが、いずれは自分のヨメさんとなる女、ではなく女神が、メチャウケで踊っているのだ。これはもう最前列のカブリツキで手をたたき、爆笑して観ていてほしかったものだと思う。

つづく

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