コロニーは、よくある円筒型やドーナツ型ではなく、小惑星の中をくり抜いて作られたタイプだった。そのため、一見してコロニーとはわかりにくい。
データ上では廃棄されたことになっているが、電気は通っているようだ。やはり、中に誰かいるのだろうか。
「どうやって乗り込む?」
私はレオネにたずねた。
「シャトルの動力を切って、救難信号を出してみる。コロニーが生きていれば、自動救助システムが作動するでしょう。回収されたら、保護色になって忍び込む」
「待て。きみはそれでいいが、私はどうする?」
「あなたはいざとなったら飛べるでしょう?」
「つまり、いざとなるまでは捕まっていろということか」
「捕まるとは限らないわ」
レオネは平然として、主電源を落とした。正面のモニターが消え、室内が真っ暗になった。私のお先も真っ暗だ。
しばらくして、レオネが小さく叫んだ。
「返事が来た!」
こちらが出した救難信号を、コロニーがキャッチしたらしい。
さらに待っていると、シャトルに何かが接触したような軽い衝撃があった。
「コロニーから来た、自動操縦のタグボートよ。これで引っ張っていってくれる」
息を潜めて目視用の小窓から外の景色を見ていると、シャトルがコロニー内部に格納されていくのがわかった。
シャトルが静止した。
ふりかえって操縦席を見ると、レオネがいない。
「おい、もう保護色になったのか?」
返事はない。
私は嘆息して、シートベルトを緩めた。
暗闇の中で立ち上がり、入口の方を向いた。
光が動いた。どうやら、扉がいつのまにか開いていたようだ。ということは、レオネはもう出ていったのだろう。
コップを伏せたような形のロボットが、次々とすべるように入って来た。それぞれにサーチライトで、あたりを探るように照らしている。
一台のロボットが私の前で止まり、質問を発した。
「ナニガ アリマシタカ?」
「運転手が逃げ出した。私は操縦ができない。だから救難信号を出した」
順番が多少違うが、細かいことはいいだろう。
「オケガハ アリマセンカ?」
「優しいんだな、子猫ちゃん」
「オヒトリ デスカ?」
「二人に見えるかね?」
「ナニヲ オノゾミ デスカ?」
「生きている人間がここにいるなら会わせて欲しい。誰かとしゃべっていないと死んでしまう体質なのでね」
ロボットは沈黙した。他のロボットと相談しているのかもしれない。
「ブキヲ オアズカリ シマス」
唐突にそういうと、ロボットの頭の上からアームが伸びて、電光石火の早業で私の万能銃を取り上げた。
「ゴアンナイ シマス」
ロボットたちは声を揃えると、私の周りを取り囲んだ。
(第十二話に続く)
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