〈赤ワシ探偵シリーズ2〉ニフェ・アテス第八話「歌姫」
「お久しぶりです......と言っても、あなたが私を覚えているはずはありませんね。私はほんの子どもの頃にあなたの歌を聞いたことがあるのです。どこかの小さな酒場で」 ジョーは控えめに言った...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
「お久しぶりです......と言っても、あなたが私を覚えているはずはありませんね。私はほんの子どもの頃にあなたの歌を聞いたことがあるのです。どこかの小さな酒場で」 ジョーは控えめに言った...
※明けましておめでとうございます。お正月なので番外編をお届けします。こたつでのんびりお楽しみください。 「オールドアース訪問記」 今年は年末年始の休みが長いので、オールドアースの観...
「アレキセイ・トトノフスキイ!」 ジョーが、うなるように言った。 「思い出しました。十年ほど前に音楽アカデミーを追放された、あのトトノフスキイですか。追放の理由は公表されませんでしたが、噂では異端...
「シロ探しの依頼、承った」私はうなずいた。 「本当に、同行してもいいのでしょうか」 「店を休みにできるのなら」 「構いません。どうせ閑古鳥です」 「報酬は、今回の事件(ヤマ)に関する情報と、溜...
ジョーは爪を引っ込めたものの、まだ興奮冷めやらぬ様子で、先刻まで矢車兄弟がいた塀の上に飛び乗った。向こう側に向けてシャーッと威嚇する。 「なんだよ、俺たち何もしてねえよ!」という、兄弟のどちらかの声...
私は重い気持ちで「山猫軒」へ向かった。 考古省の役人、サラク・ギハに見せられた、出土品窃盗の「容疑者」の顔。 それはまぎれもなく、ジョーのところに居候している天才ミュージシャン、あの白銀の猫男子だ...
白銀の迷い猫とジョーの素晴らしいセッションを聞いた翌日のこと、赤ワシ探偵社に依頼人がやってきた。 ぐったりするような残暑の日中に、ダークスーツをきっちり着込んでネクタイを締めた、だいぶ人間寄りの狐人...
白銀の猫男子が引っ込んだドアの隙間から、ふたことみこと交わす声が聞こえた。 と思うと、その隙間の幅が広くなって、りっぱな鯖猫があらわれた。この「山猫軒」のオーナー兼バーテンダーのジョーだ。右目をおお...
今年の夏は暑かった。 オールドアースの立体都市「トキ市」の中層に位置するこの街区は、ただでさえ熱気がこもりやすいが、それにしても今年はひどかった。 あまりにも暑いためか、日中の街なかで生き物を...