山メシの話 〜モチピザ編〜 by 芳納珪

単に「野外料理」をしたいだけなら、クーラーボックスや大きな鍋を車に積んでキャンプ場へ行けば、家で作るのとそれほど変わらない料理を自然の中で楽しむことができるでしょう。

だけど、私としてはそれではものたりない。様々な制約の中で工夫するのが楽しいのです。
私の山メシのモットーは「最小限の材料と設備で作ること」。
もともと、折りたたみ式とかスタッキング式のプロダクトが好きなので、山用の折りたたみ式コンロや、重ねてコンパクトに収納できる鍋や食器は、早い段階で揃えました。
だけど食材については、山用品の専門店で売っている特別なものではなく、近所で手軽に入手できるものを使いたいという思いがありました。なぜなら私の山メシ研究は、非常時の予行演習も兼ねているからです。

スーパーの食料品コーナーを山メシ研究家の視線で見てみると、意外なものが見つかります。「スライス餅」もその一つ。
お餅、みなさんはどうやって食べるのが好きですか? 私は以前は「餅網で焼く」一辺倒でしたが、最近は「お湯で温める」派です。
「焼く」「茹でる」いずれにしても、もち肌の柔らかさを取り戻すにはそれなりに時間がかかりますよね。ところが、この「スライス餅」は、ほぼ一瞬で「もうどうにでもしてください」と言わんばかりにヘナヘナと柔らかくなってしまうのです。

なぜそうなるのかというと、秘密は「厚さ」です。切り餅といえば通常1cmほどの厚さですが、スライス餅の厚さは2mm程度。このため、すぐに中まで熱が通るのです。
スライスされたものがパッケージされ、製品として売られていますが、なんと普通の切り餅を薄くスライスする専用のスライサーもあるようです。ただ薄いだけの餅がそれほど人気とは知りませんでした。

このスライス餅、山メシで大活躍なのです。
山で歩いた後は炭水化物が欲しくなります。特に米。
数秒で柔らかくなるので、カップ麺やおしるこに「ちょい足し」アレンジができます。嘘だと思うかもしれませんが、それだけでまるで別の食べ物のようになります。
フライパンで焼く場合は1分ほどで膨らみます。重ならないように敷き詰めてピザソースを塗り、トッピングをのせればモチピザに。

写真は缶詰のアンチョビとピーマンと粉チーズをのせました。とろけるチーズといきたいところですが、「常温で運べる食材」というマイルールがありますので。
膨らんでから少し置いておくと、余熱で下側がカリカリになります。モッチリ&クリスピー!

(by 芳納珪)

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