先週のエッセイで、香港人の友人を高尾山に連れて行った話を書きましたが、書いているうちに思い出したことがあります。
山道を登り、頂上の茶店で高尾山名物の「とろろ蕎麦」を食べたときのことです。とろろの上に乗っているうずらの卵を見て、友人はとても驚きました。「こんな小さい卵、初めて見た!」と。
中華料理の八宝菜や五目あんかけ焼きそばにはうずらの卵が欠かせませんが、あれは日本独自のアレンジなのでしょうか。もっとも、実際は「中華料理」という料理は存在せず、地域によって全然違うそうなので、香港では一般的な料理ではない可能性もありますが……。
友人は私の家に滞在していたのですが、ある日、スーパーでぶどうの「デラウェア」を買って帰りました。9月で、ちょうど旬だったのです。
2人でデラウェアを食べていると、友人が笑い出しました。「小さくて食べにくい!」というのです。
おそらくこのとき、友人の頭の中で「日本の小さな食べ物シリーズ」が始まったと思われます。
それからしばらく後、その友人が飛行機の乗り換えで数時間だけ東京に立ち寄り、晩ごはんを一緒に食べたことがありました。
上野のアメ横をぶらぶら歩いて、友人が選んだ居酒屋に入りました。メニュー選びは私に任されたので、適当にいろいろ注文しました。その中に「焼きししゃも」があったのです。
私はししゃもが好きなので、何の気なしに頼んだのですが、やって来たししゃもを普通の焼き魚と同じように箸で一生懸命ほぐそうとする友人を見て、ハッとしました。
今この瞬間、ししゃもが「日本の小さな食べ物シリーズ」に入れられたのではないだろうか。
日本人は、ししゃもやめざしを見れば「まるごと食べる魚」と認識しますが(頭を残す人もいるようですが)、初めて見る人にとっては単に「小さいサイズの魚」でしょう。
日本には「小さいものを愛でる」文化があると言われることがあります。
盆栽しかり、根付しかり。
「小さい食べ物」はもちろん世界中に存在するでしょうが、もしかしたら日本では、食文化においても小さいものを好む傾向があるのかもしれません。
ただ小さいだけでなく、「普通サイズ」があっての「小サイズ」の食べ物は、他にどんなものがあるか考えてみました。
姫リンゴ、芽キャベツ、ペコロス(小タマネギ)、ヤングコーン、ベビーにんじん、小海老……
これらの食べ物の日本での消費が、他の国と比較して多いのかどうか、気になるところです。
(by 芳納珪)
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