魔法使いが石の鷹を置いて、街に呪いをかけました。
朝が来なくなったのです。
石の鷹は、どうやっても動きません。
そこへ影男がやってきて言いました。
「私は鷹に命を吹き込み、飛び立たせることができる。ただし、ただでは面白くない。勝負ごとで私を負かしたらやってやろう」
街の人は、囲碁、将棋、チェス、トランプ、あらゆるゲームで影男に勝負を挑みました。
しかし、なかなか負かすことができません。
影男が消えないように、ランプで煌々と照らされた部屋で、勝負は続けられました。
七日目に、靴みがきの少年が、とうとう影男を追い詰めました。
勝負を決めるカードを少年がめくろうとしたとき、とつぜん部屋が真っ暗になりました。
影男の持っていたカードが、はらりと落ちる音がしました。
誰かが叫びました。
「火を消したやつを捕まえろ!そいつが魔法使いだ!」
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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