きりりと澄んだ空気をつらぬく、声。
たかく、ひくく。つよく、よわく。
満月が中天から降りてくるあいだ、声は波のように、
地平線へむかいます。
たったひとりで。ただいっしんに。
空と大地のあいだに、金の糸。
たわんだ声が、糸を引き上げます。
ゆう、ゆう、ゆあうらあ!
いくつもの色が、あやつられておどります。
こうして彼は、よあけをつかさどるものとなったのです。
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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