版画とちいさなおはなし(16)

「白い犬」

「白い犬」

その犬は、毎朝丘の上に行って、森のねぐらから飛んでくるカラスを数えます。
「一羽、二羽、三羽…」
昼間は、窓辺で本を読むご主人の足元にじっとして、何か変わったことがないかと見張っているのが仕事なのですが、そのあいだずっと、カラスの数を忘れないようにしているのです。
夕方になるとまた丘へ行って、ねぐらへ帰るカラスを数えます。数が合っていることをたしかめると、うちへ帰って、安心して眠りにつくのです。

(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)

『天ノ狗』作・芳納珪

『天ノ狗』作・芳納珪【amazonで見る】

☆     ☆     ☆     ☆

ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・漫画・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内> <公式 Twitter


スポンサーリンク

フォローする