版画とちいさなおはなし(15)

「丘の手」

「丘の手」

めり、めり、めり。
地面に右手が生えました。
指をいっぽんずつまげのばしし、ぼんやりと暮れなずむ丘を、ゆっくり這いはじめました。
なにかをさがしているようです。
するとこんどは、となりの丘に左手が生えました。
おなじように指をまげのばししたあと、やっぱりなにかをさがすように這いはじめました。
あれはてた、かたい地面の上を、ふたつの手が、てんでばらばらにさまよっています。
しかし、両の手が出会うことは決してないのです。

(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)

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