版画とちいさなおはなし(19)

「翼があれば」

「翼があれば」

きょう、はじめて街に行った。
ご主人とぼくは広場に行き、ぼくの背中に山と積んだ花は飛ぶように売れた。
広場のまんなかには、翼の生えた大きな馬の石像が立っていた。
帰ってきたあと、マスチフ犬のフリオが教えてくれた。あれはペガソと言う生き物だって。
ペガソになりたい、とフリオに言うと、笑われた。ロバはペガソにはなれないよ。
その夜、夢を見た。背中の花が飛びちって、また集まったら翼になった。
ちょっとくすぐったい感じがして、翼は背中にくっついた。

(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)

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