版画とちいさなおはなし(18)

「きのこの上にとり残された羊」

「きのこの上にとり残された羊」

いやあ、大変な目にあいました。
森の中に、黄色いふかふかした、いいにおいのする場所があって。
足を踏み入れてみると、ほんのりあったかい。
ちょっと寝そべったら、たちまち眠くなっちゃって。
目が覚めたときには、景色が変わってました。
そう、寝ている間に成長したんです。
動くと崩れそうになるし、全体にゆらゆら揺れて。
結局、枯れるまで待ちました。
え? いや、一日で枯れちゃうんです。
でも、おかげで私、いいにおいがするでしょう?

(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)

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