「きのこわたり」
リスモドキは草原を見渡した。
すべてのきのこは充分に成長し、表面はしっかりと固まって いる。待ちすぎると、きのこは中から腐り始め、やがてつぶれてしまう。
前に渡ったやつは、それで草原に落ちてしまい、二度と上がってこなかった。
リスモドキは決意した。今が踏み出すときだ。
地平線の先には「シンカ」があるという。 それはどんなものなのか、戻ってきたものがいないのでわからない。
前に進むだけだ。
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
※リスモドキ(ツパイ)は、ヒトと共通の祖先を持つと考えられているそうです。
☆ ☆ ☆ ☆
※ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・漫画・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内> <公式 Twitter>