将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第23回

トモアキたちは学校での将棋クラブ、西公民館での将棋同好会と区別して、カズオのうちで集まるのを将棋研究会と呼ぶことにした。将棋のプロ棋士が何人か集まって修業するのを研究会というのだとシュウイチに聞いて、だいぶずうずうしいが、マネさせてもらったのだ。

二回目の研究会は五月の第五日曜日だったので、野球の練習がないジュンが初めて参加した。シュウイチが公式戦を勧めたのはこのときだった。

まずジュンと二枚落ちで対局し、全員の力がわかったところで、シュウイチは一冊のノートを取り出してきて、こう言った。
「中学より上の学校の将棋部では、活動に熱が入るようにいろいろ工夫してる。その一つが公式戦を作ることなんだ」

シュウイチは説明した。将棋の強さは段と級で現わされる。強い方が段だが、トモアキたちの実力ならまだ級の方だ。
だから、まずメンバー一人一人の実力に応じて級を決める。そして対局のたびに勝敗を公式戦ノートに記録し、その成績がよければ級が上がることにする。昇級という目標があると日々の対局にもはりが出てくるし、長く続けていけば、自分の実力がどのくらい上がったか、目に見えてわかる。ただ漫然とやるよりずっと効果的な練習方法だ。

「これはぼくが勝手に決めたんだけど、だいたいこんなもんだと思う」
シュウイチがひらいたノートをみんなは興味津々でのぞきこんだ。カズオが4級、ジュンが5級、トモアキが6級、トオルが8級で、アサ子が9級だった。

「自分はもっと強いって、不満な人もいるだろうけど、五連勝で昇級ってことにするから、そういう人はどんどん勝って昇級すること」
「佐野とやればかんたんに五連勝で昇級だっ」
とんきょうな声をあげたジュンに、シュウイチは首をふった。
「ところがそうはいかない。5級が9級に平手で勝ってもじまんにならない。公式戦は手合い割りでやるんだ」
「手合い割りってコマ落ちのこと?」
「そう。こっちの表を見て」
シュウイチは今度はノートの表紙のウラを指し示した。

――――続く

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