皮下輸液(皮下点滴)は効くのか? 腎臓病の猫の脱水対策

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猫の脱水対策に皮下輸液

ムギが二十歳になった6月下旬からぽつぽつこのブログを書いてきたが、その間にひとつ変化があった。慢性腎臓病による脱水対策に皮下輸液をはじめたのだ。

きっかけは血液検査の数値が悪化したことだった。
ムギは3年前に慢性腎臓病が発覚してからだいたい半年おきに血液検査を受けてきた。血球検査と生化学検査、たくさんの項目があり、それぞれ大事な健康の指標となるが、ムギの場合、なんといっても注意すべきは腎機能関係の数値で、それ以外はほとんど基準値内におさまっている。
腎機能関係の数値とは血中尿素窒素(BUN)クレアチニン(CRE)だ。どちらも腎機能の不調により本来排出されるべきものが排出されず血液中に残ってしまっているものだ。
IDEXX SDMAもあるがこれは主に早期発見に重要とされる指標で、すでに腎臓病であるのが明らかな場合はBUNとCREを見ていれば良いと教わった。

3年前はじめて腎臓病の診断を受けたときの数値は、BUN 37(基準値15~33)、CRE 2.6(基準値0.8~2.1)だった。
獣医さんの指導により、腎臓病用療法食(主にロイヤルカナン腎臓サポート)に切り替え、血圧の薬フォルテコールと粉末活性炭マイランを飲むようにして3ヶ月後の検査ではBUN 31、CRE 2.0と基準値内に戻った。
その後半年ごとの検査で血中尿素窒素もクレアチニンも基準値上限を超えたり超えなかったりしつつも、治療開始前の数値を上回ることはなく、腎臓病の進行はおさえられているようだった。
それが昨年12月の検査でBUN42、今年6月の検査ではBUN52と連続して悪化した。CREも3.1と治療前の水準を超えてしまった。

そこで先生から「何か治療を加えた方がいい。いちばんおすすめは皮下輸液。ほかにはアゾディルというサプリ。活性炭を倍量にするのも有効かもしれない。フォルテコールに加えて、あるいは代えてラプロスという手もあるがあまり推奨はしない」と言われた。

皮下輸液について自分でも勉強した(皮下点滴、皮下補液という呼び方もあるが同じもの)。
猫は慢性腎不全になると、おしっこをたくさんする。腎臓のフィルター機能が落ちているので体内の老廃物・毒素をしっかり濾しとって濃いおしっこをすることができず、薄いおしっこをたくさんすることでそれをカバーしようとするからだ。
おしっこをたくさんすると体内の水分は減る。ふつうに水を飲んでそのぶんを補給できればいいが、猫はもともと砂漠生まれの動物なので水を大量に飲む習性はなく、どうしても脱水状態になりやすい。
それを補助するのが皮下輸液の目的だ。栄養補給やお薬投与ではなくあくまで水分補給が目的だから生理食塩水かリンゲルが使用される。
血管への点滴ではなく、皮下、皮膚と筋肉組織のあいだに入れる。猫は首の後ろをつまむとよくわかるが、皮膚がけっこう伸びる。ここに細いチューブつきの針を刺し注入する。血管に入れるのと違い、ゆっくり時間をかけて吸収されるらしい。

セカンドオピニオンを求める

皮下輸液をはじめるべきかどうか、正直だいぶ迷った。
ひとつの理由はヘマトクリット(HCT)値だ。ネットで調べてみると、猫が脱水状態にあるかを判断する指標はヘマトクリット値であると書かれている。しかしムギは過去のいずれの血液検査でもヘマトクリット値は正常だった。上限近くでさえない。それでも脱水状態なのだろうか?
簡易なテスト法として首の後ろをつまんで引っぱり、離したときそれが元にもどる速度で脱水状態を見るというのも多くのサイトや本に載っている。ムギの首の後ろを何度もつまんでみたが、もどりが悪いのかどうか、他の猫と比べてみないことにはよくわからなかった。

もうひとつの理由は、病院に行って皮下輸液を受けること自体のストレスだ。ムギはこれまで半年に一度しか病院に行っていなかったが、皮下輸液をするとなると少なくとも週1回は通うことになる。
はっきり脱水状態でそれが健康に悪影響を与えているならしかたないが、上記のように脱水の確たる証拠がない状況で、人間でいえば100歳のムギに毎週のストレスを与えたくはない。

悩んだ末、セカンドオピニオンを求めることにした。他の獣医さんを探し、ムギを診察してもらったのだ。過去の検査結果も見てもらった。結果、新しい先生もはっきり皮下輸液をした方がいいという意見だったので、とにかく一度は試してみることにした。

やってみると、意外にスムーズだった。採血とは大違いで、ムギは輸液のあいだ暴れたりしなかった。これならさほどのストレスではないと思われた。
猫の体重によるだろうが、ムギは150mlのリンゲル液を入れてもらった。処置後は入れた場所から下の方にかけて身体が目に見えてふくらんでいる。それがゆっくり吸収されて翌朝には元通りになる。ふくらんでいるあいだも重くて不快だという様子はあまりない。

猫によっては輸液後(脱水が解消され)ぐっと元気になる、食欲が出て活発になると聞いていた。ムギの場合はそこまで顕著な変化は見られなかった。それでもいくらかは調子がいいような気がしたので、当分輸液を続けてみることにした。

皮下輸液の他の対策、サプリや活性炭増量、薬の変更などは行なわないことにした。一度にいろいろ変えると、結果が良くても悪くても、それがどの原因によるものかわからないからだ。
週1回の輸液だけを加え、その結果を見るため2ヵ月後に血液検査をすることした。

(by 風木一人)

猫のムギ20歳。枕で寝るのが好き。

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