【 魔の目撃 】(10)
現場に向かいつつあれこれ考えた。今日と明日でこのハードなバイトは終了だ。この最後の2日間のあいだに彼女を見かける確率はいったいどれほどなのだ...
現場に向かいつつあれこれ考えた。今日と明日でこのハードなバイトは終了だ。この最後の2日間のあいだに彼女を見かける確率はいったいどれほどなのだ...
「見たか?」 「……見ました」 「話したか?」 「……話してません」 我々は事務所にいた。長テーブルの端で調理パンと缶コーヒーを...
夜の空き地で犬が殺された。たまたまその現場近くに2人の男がいた。足場4階で涼んでいた私と、事務所脇の暗がりに潜んでいたキツネ男だ。2人とも気...
キリンラガーを飲みながらキツネ男の話を検証した。 彼の説明により、昨夜、彼がとった行動がはっきりした。彼は現場での仕事が完了した後、一旦街...
現場監督はさすがにほっとした様子だった。ひととおりの報告を聞きながら地面に向けて煙を吐き出していたが、報告が終わった時点で、くわえていたラッ...
現場監督は口ひげ、小太り、黒ブチ眼鏡、といった男で、私は好感を持っていた。当時……この話は1978年頃の話なので、かれこれ40年ほど前の話に...
建築現場における私の仕事はまさに「日雇い」だった。朝の7時に現場に行き、現場監督からその日の指示を受ける。それまでは全くわからないし、わかる...
無言と緊迫。たぶん10秒ぐらいだった。しかしそのとき感じた時間。それはもう長かった。 双方ともに暗闇の中で五感を総動員させ、相手の気配を探...
そこは想像以上に気分のよいところだった。もう一度周囲を見回してだれもいないことを入念に確認し、私は足場の4階に座りこんだ。手の甲で額の汗をぬ...
大学生時代には「まあずいぶん色々なバイトをやったものよ」といまでもなつかしく思い出すことがある。 中学生の家庭教師、石膏デッサン教室の講師...