最近の毎朝の楽しみは、7時15分BSで「あまちゃん」の再放送を見ること、続けて「らんまん」を見ることだ。
説明は不要だと思うが、「らんまん」は日本を代表する植物学者牧野富太郎をモデルにした人物の人生を描くNHKの朝ドラである。
牧野先生は実に劇的な人生を送られた方で、高知の由緒ある酒蔵の家に生まれ、小学校中退の学歴でありながら東京帝国大学植物学教室の出入りを許され、一度は出入りを禁止されるものの、講師をしながら、植物研究を続け日本に植物学を広め、東京練馬区大泉学園の地で94歳の人生を終えられた。
このドラマの見どころの一つは、経済的観念が無いに等しい先生を支える妻寿恵子の存在だ。貧乏な長屋生活を送りながら、明るい性格で夫を支えていく(現実には妻の壽衛は、55歳で病死している。それも切ない)。
さてそれで、この役を演じる浜辺美波が美しく可愛いのだ! 卵型のお顔、およそ、これまでテレビで見た美女の最高の部類に入る。本音を申すと、彼女のご尊顔を拝するために毎日見ているところもある。
そろそろ映画のことに触れたい。彼女をスクリーンで見たのは、今年公開の「シン・仮面ライダー」であった。高2の時にテレビ放映が始まった「仮面ライダー」に夢中になることは流石になかったのであまり期待しなかったが、結構楽しんで見た。
製作が東映。故に垢抜けしていない、ちょっと野暮ったいところもあるが、構図や空間の捉え方にスタイリッシュなところもある。特に、バイクが疾走する撮影(徳山のコンビナート)がいい。「シン・ゴジラ」(2016)のように、国を守る議論を延々と描くような、屁理屈の多い映画でなく(?)、小学生レベルの内容にしたのが良かったのではないか。
池松壮亮が主役の本郷猛を、柄本祐が一文字隼人を演じる。浜辺美波は緑川ルリ子役。コートを羽織りブーツを履き、カッコ良かったのを覚えている。(「らんまん」での、大正時代の絣の着物とは全く違う)。ラストは、懐かしい子門真人(「泳げ、たいやきくん」)が唄う主題歌が朗々とスクリーンに響き渡る。あの、「♬迫るショッカー」から始まる歌だ。
先日、初めて、大泉学園にある牧野記念庭園に行ってみた。先生が関東大震災の後渋谷区から移転して来て、30年あまり住んでいたお家の跡地にある。それほど広くはないのだが、世界で初めてその存在を発見し愛妻の名を付けたスエコザサを始めとして、いろんな植物が育っている。愛用した植物採集の道具も展示してあり、胴乱や顕微鏡もある。実際に使われたものだと思うとジーンと来た。
仕事場がそのまま残っているのが興味深い。独立した「離れ」の二間の部屋だ。壁、床に本がうず高く積まれ、新聞紙に包まれた標本も多数あり、作業用の文机もある。上には、書きかけの原稿まで置いてある。脇には暖を取る火鉢まであり、先生がそこにおられるようであった。昭和の生活の懐かしさも感じられた。
自筆の植物画も展示され、その画の緻密さ、美しさにはビックリする。天才を感じた。この庭園は何と入場無料である。申し訳なくて、絵ハガキセットを二つ購入した。
最後に「あまちゃん」にもふれたい。10年前は忙しく断片的にしか見ていなかったが、今、ゆっくり見ると、この作品は最高に面白い! 脚本の宮藤官九郎は天才的なシナリオ作りだ。舌を巻くとはこのことだ。
高校生天野アキが母親の故郷北三陸に行き、海女さんを経験し、また東京に帰りアイドルを目指すという奇抜な全体のストーリーの面白さもさることながら、登場人物のキャラが見事に立っているし、毎回と言っていいほど「小ネタ」というかクスっと笑えるものが入っているのが憎い。田舎と都会の対比も、まことに上手い。
宮城という田舎の出身で、80年代のサブカルも、都会のAKBのような女子アイドルグループの作られ方の実態、芸能界の裏側にも精通したクドカンこそが書けるシナリオではないか。
宮本信子、小泉今日子、薬師丸ひろ子、古田新太ら実力派のベテランと初々しい新人たちの組み合わせもいい。このドラマから、有村架純、能年玲奈(今の芸名は「のん」)、橋本愛たちが羽ばたき、今も大活躍。能年玲奈が、「あまちゃん」の中で、テレビの教育番組で「さかなクン」と共演しているが、昨年公開の映画「さかなのこ」(佳作)で、その「さかなクン」の半生を演じたのもご愛敬だ。
(by 新村豊三)