という盆栽愛の目覚め期に、人は最初に何をするものでしょう?
盆栽フクロウと庭ねこ 「庭ねこ、盆栽を作る」
あなたもどれかに当てはまる、これが盆栽ステージだ! 盆栽ステージ移行歴(盆栽自分史)まとめのすすめ
庭ねこ、行動が早いです。
盆栽が気になったからといって、こんなに初動が素早いことはなかなかないのではないでしょうか。じゃあ、一般的にはいつ、どういう行動をとるのか。
というわけで、盆栽を知った後、だいたい以下のような「盆栽ステージ」を経るのでは、と考えてみました。これを読んでいるあなたも「盆栽」を知っている以上、どこかにあてはまるはず。さて、どこに?
(ステージI)盆栽ファーストコンタクト期
- 盆栽というものがこの世にあると知っている
(ステージII)盆栽モヤモヤ期
- 盆栽が時々気になる
- たとえば、盆栽って一体何なんだ? 盆栽と鉢植えは違うのだろうか? 何で枝がクネクネしてるんだ? などと気づくと考えている
(ステージIII)盆栽ヒラメキ期
- 盆栽好きになるまであとひと押しのきっかけ待ちという段階
- 盆栽がはっきりと気になってきて、以下のようなことを時折ふと考える
- 盆栽の手入れってよほど大変なんだろうか?何をしたらいい?
- 盆栽にはどんな種類がある?
- 盆栽ってどこにある? どうやって手に入れるもの?
- 自分で作る? それとも売ってるの? どこで?
- 高いの? (高そうだ)
- そのうち何かしらの盆栽行動を開始し、次ステージに移行
(ステージIV)盆栽好き
- 盆栽が好きだと自覚する → 盆栽活動開始
もしくは、
(別次元ステージ)
- どこかのステージから盆栽嫌いになる
- 記憶喪失で盆栽の存在を忘れる
自分がそうなので、実例としては「盆栽との出会い・バーチャル派」に多いパターンをモデルとして書いてみました。リアル派の人はモヤモヤ期が短そうだとか、リアル派に限らず、他にも「盆栽好き」に至る別のルートはたくさんあるだろうとか、考え出すとキリがないので大雑把に分けました。あくまでも私の観察と想像による分類です。(盆栽との出会いリアル派・バーチャル派については前回をご覧ください)
庭ねこのようにIからいきなりIIをすっ飛ばして行動する人は稀にしても、特にモヤモヤしたりはせず、Iの出会いの次にはもう盆栽が気になっている人はいそうです。
特に盆栽の英才教育を受けたわけでもなく知らないうちに盆栽好きになったというタイプの人は、まず I(盆栽とのファーストコンタクト)がいつだったかはっきりせず、Iから II(盆栽モヤモヤ期)に至るまでが長い。 II から III(盆栽ヒラメキ期)に移るまでもかなり長いのではないでしょうか。
何を隠そう私がそれです。
別に盆栽に興味はないという方も、実は今まさに長いモヤモヤ期にいて、これから盆栽好きにステージアップする可能性はあるので他人事ではありません。
では私の場合を簡単にまとめてみます。
<私の盆栽ステージ移行歴>
ステージI・盆栽ファーストコンタクト期
小学生くらいに何かのテレビアニメで「盆栽爺&盆栽を壊して怒られる子供」の定番劇を見て盆栽の存在を知る
ステージII・盆栽モヤモヤ期
成人する前後にかけて、じわじわとこちらに移行。その後、長く続く。この時期に得た印象的な盆栽知識・盆栽体験の代表としては、
・盆栽とは若い木を古木であるかのように仕立てる遊びらしいと納得しかけていたところへ、「樹齢数百年の盆栽もある」と聞いて「古木を古木に見せかけるってことか? 意味がわからん」と驚いた
・盆栽とは古木に見せかけるのみならず「悠久の時を手の中に」というコンパクトさ・ミニチュア感を楽しむものかと再び納得しかけたところで、テレビで舟みたいな巨大鉢に植えられた「世界最大の盆栽」をクレーン車で釣り上げて植え替えている場面に遭遇。「本当に意味がわからん。もうそれ、地面に植えてやるわけにいかんのか」とさらに驚きモヤモヤを深めた
・盆栽の形を針金で変える場面に遭遇。針金をかけるのは朝顔の支柱・倒れかけた木の添え木ような、「補助」かと思いきや、あまりにギュウギュウした曲げっぷりに、「盆栽、枯淡の境地と見せかけてけっこうバイオレンス!」とこれまた驚いた
などがある。
ステージIII・盆栽ヒラメキ期
IIとIIIの境目もハッキリしないが、このあたりの時期に記憶に強く残る出来事としては、
・たまたま行った場所で盆栽の展示コーナーを発見、普段なら素通りするが立ち寄る気になり、見たら意外と面白かった
・友達が「道の駅」で売っていたミニ盆栽に強い興味を示し「可愛い、欲しい!!」と興奮しているさまを見て「変わった人だな」と思いつつ、いやでも確かに可愛いかも? とちょっと思った
・フクロウが頭に何か乗せた絵を描こうとして「そうだ盆栽」と思いつき、描き始めた
あたりが三大事件。
ステージIV・盆栽好き
「盆栽フクロウ」を描き始めて約5年、フクロウの頭に乗せるために盆栽についてあれこれ調べるうちにいつしかハマり、「盆栽作り1日体験教室」に参加してついに盆栽好きの盆栽オーナーの仲間入り。
もはや時系列がハッキリと思い出せないところはありますが、ひとつのステージに数年から十数年とどまるという超絶のんびり、ノロノロ進行です。そのため特にモヤモヤ期・ヒラメキ期に蓄積した疑問がたくさんあり、それを共有しようというのが本連載の趣旨のひとつでもあるわけですが、もちろん、各ステージはクッキリと分かれるものではありません。現に、盆栽好きとなり、盆栽を何鉢か育てている現在でもモヤモヤ期症状は残っており、続々と新しいモヤモヤがたまっています。また、積もり積もったモヤモヤごと盆栽に触れていると、「盆栽好きモヤモヤ回収ヒラメキ現象」とでもいう楽しい複合的体験もよくあります。総じて、これらステージへの分類は曖昧なものということです。
ですが、仮にでも分類して書き出してみると面白いには違いないです。庭ねこについても同様にまとめます。
<庭ねこの盆栽ステージ移行歴>
ステージI・盆栽ファーストコンタクト期
庭で頭に盆栽を乗せたフクロウを見かける。頭に乗せたものが気になる(まだ「盆栽」という概念は知らない)
ステージII・盆栽モヤモヤ期
何あれ?と衝撃を受けたのち、ちょっと考える
ステージIII・盆栽ヒラメキ期
家の中を探し、茶碗、茶筅、飾ってあったドライフラワー(実)、ごはん、抹茶、などを使って盆栽的な何かを作る。そのプロセスが破壊行動に等しかったためバレたのち叱られる
ステージIV・盆栽好き
たぶん、すでに盆栽が好きになっている
比較すると全然違います。私は全行程で数十年に対し、庭ねこは数十分といったところですから、ステージ区分も困難なほどのスピード展開です。
盆栽行動の初手から盆栽活動へ
移行歴の中に太字で色をつけた部分があります。それが「盆栽行動」「盆栽活動」にあたると思われる事項です。
このふたつも厳密に区別のつくものではありませんが、盆栽が気になってきて打った最初の一手を「盆栽行動」のはじめ、その後継続するであろう一連の盆栽行動を「盆栽活動」、その初動を「盆栽活動」のはじめ、としてみました。
私の場合、「盆栽フクロウを描き始めた」のを盆栽行動はじめの一手と考えました。最初はこんなに描き続けるとは思いもしませんでしたが、「盆栽フクロウ」はもはや私にとっては継続的な活動ですので、これを盆栽活動のはじめとしてもよいようなものです。ですが、自分の中ではどちらかというと絵を描く活動であって盆栽活動と言えるのか、微妙です。「フクロウ活動」でもあるのでは、などと考えるとややこしいですし、やはり「マイファースト盆栽を作り、手入れを始めた」のを盆栽活動の始まりとしたい。
遡って盆栽ヒラメキ期に「普段なら素通りする盆栽展示を見た」なども、盆栽行動の初手と考えてもよいことです。
つまり、これは曖昧なだけでなくあくまで主観的なもの。盆栽を育て始めたのを私の盆栽活動のはじめ、ステージIVへの移行のしるしとしたのも、「盆栽好き」イコール「リアル盆栽を育てること」と限定する意図ではありません。盆栽を見るのが好き、盆栽のことを考えるのが好き、盆栽の写真を撮ったり絵に描くのが好き、というのもれっきとした「盆栽好き」。そういう人は、たとえば初めて自分でわざわざ盆栽を見に行ったのが盆栽活動のはじめとなるでしょう。
一方庭ねこの場合、最初の盆栽行動と盆栽活動の開始の区別もつきにくいです。「あの頭に乗せてたのは何?」と衝撃を受けたのも重要な出来事ですが、それは「行動」と言えるのか、どうなのか。では、家にあるあれこれを勝手にリサイクルして盆栽的なサムシングをクリエイト、は盆栽行動の初手なのか、盆栽活動のスタートなのか? どちらとも取れますが、今後これを継続した盆栽活動にしてくれては非常に困りますし(主に同居の人間が)、庭ねこも次は別の手を考えることでしょう。やはり、「盆栽的な何かを作る」が、庭ねこ「盆栽行動」はじめの一手だろうと結論しました。そして庭ねこは多分すでに盆栽好きになっていますが、まだ「盆栽」という概念を知りません。これからそれを知り、何らかの盆栽活動を開始することで本格的にステージIV・盆栽好き に入っていくと思われます。
さて、あなたも試しに、「盆栽ステージ移行歴」をまとめてみませんか。個人史の節目を簡単に書き出し、「盆栽」にまつわる記憶・体験がどのあたりに入るか、「あれ、いつのことだっけ?」とパズルのように当てはめてるのもきっと楽しいはず。つまり盆栽を軸にした自分史です。
このコラムは、盆栽のあらゆるステージにいる人が逃れられない「盆栽」の影響・モヤモヤ・疑問・魅力を言語化・可視化して共有したくて始めたものです。「盆栽ステージ移行歴なんて書くことが一つもない」という方も含め、いろいろなステージにいる方が読んでくださればとても嬉しいのです。今は書くことが一つもなくても、ではなぜ盆栽のことをうっすらとでも知っているのか? という鍵となる記憶が、今後このコラムにおつきあいいただくうちに突然蘇るかもしれません。
なぜならばあなたの脳内には、すでに盆栽があるのだから。
<今日の盆栽メモ> 魅惑的な大人の盆栽おもちゃ
こういうアイテムが「盆栽はじめの一手」になる人もいるのかな、と楽しく妄想したのがこれ、大人の盆栽レゴ。全部で878ピースなのは「花葉」の語呂合わせか。完成図通りに組み立てる盆栽プラモデルみたいなもの? と思いきや、そこはブロック遊びらしく好みの形に作れ、さらに、緑色の葉を、ピンク色の花に付け替えられるというから楽しそう。また、商品説明には「かわいいカエルが隠れている」、レビューを見れば、「桜のつぼみがカエルなので注意」「カエルがおもしろくていい」「桜の花かと思ったらカエルで気持ち悪い」などなど、妙にカエルカエルと書いてある。何事か、と気になってソワソワするが、理由は商品ページで画像を拡大して見ると判明する。カエルが嫌いでなければぜひ見てみてほしい、驚くから。ピンク色の花のパーツが、本当にカエルの形をしている。緑色の葉のパーツもよく見ると四角いブロックではなく、丸い葉の形になっている。
なぜカエルなんだろう。いつか「カエル(帰る)」日への思いを込めて、遠くへ旅立つ人、外国にいる人への贈り物にどうぞということだろうか。リアル盆栽もよくメッセージや願いを込めた縁起物として贈られるというし、贈答需要を意識しているのかもしれない。確かに、面白いので自分でも遊んでみたい(今じわじわ欲しくなっている)が、それだけではなく、プレゼントにしたくなるアイテム。具体的に、これを喜びそうな人に心当たりがあるわけではないけれど。
最後までおつきあいありがとうございます。
次回「盆栽とは何なのか」でぜひまた、お会いしましょう。
(by 斎藤雨梟)
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