悪魔を憐れむ歌1

ある日の事、悪魔が捕えられたというニュースが世界中を駆け巡った。
世界中の人々は驚いた。
なにしろ悪魔が生きて捕らえられたのだから。
報道関係者によれば悪魔は警察署に自分から出頭し、世界中の悪事は自分がやったのだ、と自供したのだという。
悪魔はどこへも逃亡する様子もなく(大体、悪魔を物理的に拘束できるのかどうか疑わしかった)、自らが望んだという事もあり記者会見が開かれる事となった。

記者会見の当日、会場には世界中から報道関係者などが詰めかけた。
悪魔が会見席に現れると人々は驚いた。
悪魔はあまり目立たないスーツを着たどこにでも居る普通のビジネスマンのような格好をしていた。
顔も至って「普通」の顔をしており、みんながイメージしていた「悪魔的」な悪魔とはほど遠いイメージだったのだ。
サラリーマンのような姿をしたその悪魔は手に手錠がはめられており、両側に武装した警官が付いていた。
悪魔が会見席に腰をおろすと、一人の記者が手を上げ悪魔に質問をした。

「あなたは本当に悪魔なのですか?」
「そうです。信じられないかもしれませんが、私は悪魔です。ここに居るみんなは私にはシッポも生えていないし、頭に角も生えていないし、普通の人間のような姿をしているのが不思議なのでしょう。しかしそれこそが、私の狙いなのです」
「と言いますと?」
「私の仕事とは人間に不信感を植え付ける事です。私がいかにも恐ろしい悪魔のような姿をしていれば、人間は私をただ排除するだけでしょう。悪魔が普通の善良そうな姿をしていれば、人々は隣に居る善良な人々すら疑うようになるでしょう。それこそが私の計画なのです」
「つまり、あなたはその計画の為に自首したのですか?」
「そうです。これは私悪魔とあなた方人間との最終戦争なのです」

会見場は更にざわめいた。
しかし全ては手遅れだった。
すでにこの会見の模様はテレビやインターネットを通じて世界中に配信されていたからだ。
記者会見は即中止されたが、悪魔が打った第一手は悪魔の勝利となった。
すでに世界中の人々はその記者会見の模様をテレビなどで見ていたのだ。

悪魔は特別に作られた収容所に収容され、悪魔を研究するチームが組織された。
その研究チームは心理学者、社会学者、宗教家、科学者、医者で構成されていた。
医者達は悪魔から血液を採取し、CTスキャンで体をスキャンをし、心電図をとったりして徹底的に悪魔を検査した。
その結果、驚くべき事が判明した・・・・。

悪魔には左脳しかなかったのだ!

――――つづく

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