別訳【夢中問答集】梵僊和尚による後書き(初版時) 1/2話

注:「夢中問答集」の出版にあたり、鎌倉時代末期(1330年頃)に中国(元)からやってきていた高僧、竺仙梵僊(じくせんぼんせん)が依頼によって中国語で書いた跋(ばつ=後書き)

ある日、等持寺の古先和尚が何やら小冊子を持ってやってきたかと思うと、私にこんなことを言った。

「やあ和尚、これを見てください! これはあの室町幕府初代将軍である足利尊氏さんの弟で副将軍でもある足利直義さんが、尊敬する夢窓国師のところに熱心に通っては、あれこれと悩み事を相談した時のQ&Aを記録したノートです。

それだけでも充分にレア・アイテムなのですが、このノートのさらに凄いところはですね、文章といえば通常は漢文、つまり中国語で書くべきところを、日本語、つまり「仮名文字」で書いてあるのです!

日本人の知識レベルは総じて高いのですが、それでも中国語を読める人は一握りの知識人のみです。ですから、こうやって日本語で書いてやらないと、読者層を拡大することができないのですよ。

これなら、従来の知識人たちはもちろん、一般の人たちや女性たちにも読むことができます。

すごいことだとは思いませんか!? ベストセラーとなること間違いなしですよ!

タイトルは「夢中問答集」といいます。愛媛県知事の大高重成さんは夢窓国師の弟子でもあるのですが、このたび彼が版元となってこれを書籍化し、出版する運びとなりました。

和尚! そういうわけですので、是非ともこの本に後書きを書いてやってはいただけないでしょうか?」

それに対して、ワシはこう答えた。

「ほう、それはそれは……

そもそも、世の中はアホばっかりじゃ。極めて優秀な人=「至人」が手を変え品を変えて面倒をみてやらない限り、どうにもこうにもなりゃしない。これはそれにチャレンジしようという企画じゃな?

なるほど、仏さまはオールマイティなお方じゃが、全く縁のない人たちを感化することはできない。

それに、あれこれと言葉を尽くしてみたところで、究極の真実を伝えることなど、結局のところ不可能じゃ。

究極の真実は、言語も思考も超えたところにあるからじゃ。

とは言うものの、ほうっておいたらアホはアホのままなので、なんとか口当たりをよくすることによって内容に興味を持たせようという作戦、悪くないと思うぞ。

仏さまが「私自身は万能なので、どんな手段でも使うことができる。しかし、私がいないところでは、次善の策として「それっぽく記録した文字=仮名(けみょう)」を利用するしかないなぁ。まったくアホウの相手をするのは大変だよ・・・」とおっしゃったのは、つまりこのことじゃな。

もはや世の中は末期症状を呈しており、神も仏もありゃあしない。今回の企画は、まさに「仏の再来」にも等しいことじゃな!

……ただ、まことに残念なことに、ワシは日本語が読めないのじゃよ。

その「仮名文字」で書かれた文章を直接読んで真意を理解し、その表現を吟味して、「ほう、うまいことをいうもんじゃ!」とか、「ほれ、ここの部分を読んでみろ!」とか言って、あれこれオモシロがりたいところなんじゃが……


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上巻:第1問~第23問までを収録。
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