【善財くんがゆく!】第八話 善財くん、初めて海を見る:第二の善知識・海雲比丘 (3)
その瞬間。 善財は、 ほんの一瞬だけ錯覚した。 目の前の海が、 巨大な“意識”のように見えた。 無数の声。 無数...
東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。 意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
少年は、五十三人の師に会うため旅に出る。
『華厳経』入法界品に描かれた善財童子の求道の旅は、仏教文学の中でも屈指のスケールを持つ物語です。
本連載では、その壮大な物語をベースに、原典のエッセンスを活かしながら、現代の読者にも読みやすいストーリーとして再構築。
商人、王、船頭、遊女、菩薩――多彩な「善知識」との出会いを通して、智慧とは何かを探る長い旅が始まります。
著者:文野潤也
その瞬間。 善財は、 ほんの一瞬だけ錯覚した。 目の前の海が、 巨大な“意識”のように見えた。 無数の声。 無数...
善財は、 海雲の横顔を見つめた。 「向こうから…… 見え始める?」 海雲は頷く。 「うむ」 波が寄せる。 ...
潮の匂いがした。 善財は足を止める。 今まで嗅いだことのない匂いだった。 風は湿っていて、 どこか鉄のような、 鉱物の...
善財は、 しばらく黙ったままだった。 自分が今、 何を見せられたのか。 何を聞いたのか。 うまく整理できない。 ...
善財は、 しばらく言葉を失っていた。 山の空気は静かだった。 風が吹き抜けるたび、 木々がざわりと揺れる。 だが、 ...
善財は恐る恐る口を開いた。 「あなたが……徳雲比丘なのですか?」 「ああ、たぶんな」 「たぶん?」 「今ちょっと忙し...
善財は南へ向かって歩き続けた。 町を離れるにつれ、 道は細く、空気は静かになっていく。 人の声よりも、 風に揺れる草木の音の...
翌朝。 ダニヤーカラの街は、まだ薄い朝霧の中にあった。 市場の店は閉まったまま。 通りを歩く人影もまばらで、 遠くから荷車の...
善財は家へ帰る道を、ゆっくり歩いていた。 頭の中では、まださっきの光景が何度もよみがえっている。 文殊菩薩の前に進み出たときのこ...
文殊菩薩に弟子入りして色々教えてもらおうと思っていた善財は、 思いもよらない提案に絶句した。 「オイ、善財……」 硬直...