エレキギターの冒険(前編)

むかしむかーしの事。ある山奥の村に、音色が綺麗だと評判のアコースティック・ギターがいました。
アコースティック・ギターは、弦をつま弾き、村の子供達やお年寄りたちを、その美しい音色で楽しませていました。
そんなある日の事。アコースティック・ギターはふと、こう思いました。
「ーーもしかすると、都会へ出ると僕は人気者になれるんじゃないかな?」

そのように考えたアコースティック・ギターは、都会に行く事にしました。
残念がる村の子供達に見送られながら、アコースティック・ギターは山奥の村を後にし、都会へと向かいました。
都会に着いてみますと、そこには実に多くの楽器たちがいました。
ドンドンドンと激しいリズムを刻むドラム、ボンボンボンと地の底から響くような音を奏でるベースギター、聴いた事もないような不思議な音色を出すキーボード。
彼ら/彼女たちは都会っ子の人気者でした。

アコースティック・ギターはそれらの楽器に負けじと、弦をつま弾きましたが、町の人々は誰も足を止めません。
他の楽器の音があまりにも大きいので、アコースティック・ギターの音が聴こえないのです。
何日も何日もアコースティック・ギターは街角で演奏を続けましたが、誰も耳を傾けようとはしません。

「……もう村に帰ろうかな」そう考えていると、街角の反対側から静かな音色が聞こえてきました。
それはウクレレの音でした。そこへ向かうと、アコースティック・ギターよりもひと回りも小さいウクレレが、街頭でその音色を披露していました。
でも、やはり足を止めウクレレの演奏に聞き入る者はありませんでした。
アコースティック・ギターはウクレレに話しかけました。

「やあ、いい音色をしてるね君は」

ウクレレはつま弾くのを止め、返事をしました。
「あら、あなたはアコースティック・ギターね。あなたの演奏、いつも聴こえているわよ。素敵な音ね」
このようにして二人は出会い、意気投合しました。
二人は一緒に暮らすようになり、一緒に街角で演奏をするようになったのです。

二人で演奏を始めたおかげで、少し人々が足を止め、演奏を聴くようにはなったのですが、二人は貧しいままでした。
弦が錆びてきたので、そろそろ弦を変えようとアコースティック・ギターは楽器屋へと向かいました。
そこの楽器屋で、ある広告が目に入りました。
そこの広告にはこう書かれていました。

「地方からやってきた売れない楽器たちよ! 改造をして人生を変えてみないか? 」

――――つづく

☆     ☆     ☆     ☆

来る11月24日(日)に開催される第二十九回文学フリマ東京ホテル暴風雨絵画文芸部が初参加します。

メンバーは浅羽容子さん、松沢タカコさん、クレーン謙さん、芳納珪&服部奈々子さん、斎藤雨梟オーナーです。全員参加のアンソロジー『エブン共和国~幻惑のグルメ読本』などを販売します。ぜひご来場くださいませ!

於:東京流通センター 11:00〜17:00 入場無料
ホテル暴風雨 絵画文芸部のブース番号は「コ−27」です。よろしくお願いいたします。