電車 居眠り 夢うつつ 第31回「黒電話のこと」

前回の続きで黒電話の話。
「なぜ前回の続きで黒電話なのか?」と疑問に思ったあなたはかなりの通である。普通の人は、「ああ、続きなのか。なら読むのをやめとこう」と思うだけだ。

一応説明しておこう。前回は、「認知症」と言うことがテーマで、身体障害者のためのバリアフリー化のように、認知機能に障害のある人のためのバリアフリー化も必要ではないか、そのためにはまず、やたらと機械のデザインを変えて人を混乱させるのをやめよう、と私は主張したのであった。

科学技術は日進月歩である。我々の使う機械類にも、次々に新しい機能が付け加えられていく。それは良い。だが、その度にデザインまで変えてユーザーを混乱させる必要はないと思うのだ。
そこで黒電話である。
最新機能を持ったAI搭載の黒電話。それが私の願う、人に優しい技術の姿である。

まずそのフォルムは、電電公社の黒電話である。前面に取り付けられているのは、プッシュボタンなどと言う無粋なものではなく、ダイアルである。電話をかけるときには指でダイアルを回し、「ジーー、ギョロギョロ、ジーーー、ギョロギョロギョロ」と言うあの音を聞いて、心を落ち着けたいものである。
もちろん、信号自体はトーン信号でないと、いろいろ不便なことがあるから、トーン信号にしておこう。つまり、「ジーー、ギョロギョロ、ピッ、ジーーー、ギョロギョロギョロ、ポッ」という感じである。
「そんな悠長なことはしていられない!」と言うあなたは、少し禅寺で修行をしてきた方が良いと思われるが、修行をする時間がないならば、受話器に向かって「ぜろ、さん、きゅう、ご、いち・・・」と番号を言えば良いようにしておく。今の時代、音声入力機能くらいはほしい。とくに、黒電話のフォルムを変えずに最新の機能を盛り込もうとすれば、インターフェイスとしての音声入出力機構は必須である。インターネット接続ももちろん必要だ。
要するに、Google Homeの電話版だが、用途を電話に限定する分、こまやかなサービスを実現したい。

まずは特殊詐欺対策。電話がかかってきたら、特殊詐欺に使われた電話番号のデータベースを参照して、該当する番号ならば着信拒否する。データベースにない番号であっても、電話AIが通話をモニターして、話の内容や話し方の特徴などから特殊詐欺と判断した場合は音声で警告を出す。会話の内容から危険度が上がってくるにつれ、だんだんAIの声が大きくなって、最後には会話を不可能にしてしまう。完璧な特殊詐欺対策である。

だが、せっかくのAIとインターネット接続を、めったにない特殊詐欺対策にしか使わないのはもったいない。番号検索機能も充実させたい。受話器に向かって「近くにホームセンター、あったっけ?」と話しかければ、ネット検索し、「ホームセンター〇〇があります。ここから徒歩で45分、バスで15分かかります。番号をご案内しますか?」と答える。「前に出前を取った寿司屋どこだっけ?」ときけば、過去の発信記録から「西池袋の寿司政ですね。電話番
号は、03-957-〇〇〇〇です。電話しますか?」「うん。頼む」と言えば、そのまま電話をかけてくれる。電話帳登録なんて面倒な作業をしなくても、一度電話をかけたら、電話のほうから「今の番号を記録しましょうか?」と聞いてくれる。

どれも、現代の技術でなんとかできることだと思う。
誰か、こういう黒電話を作って、僕にプレゼントしてくれないだろうか。
あ、居留守機能や、遅刻の言い訳機能も付いてるといいなあ。

lovot

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(by みやち)

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